第26話 ダンジョンで課外実習

 私や私のお父さんを恨み妬む人は大勢いるはずです。

 しかし、表立って対立する事は出来ません。

 不作や飢饉が起きたら、豊かなレオポルド領を頼らなければ成らないからです。

 なので学院内で直接私に意地悪をする人はいません。


「マリちゃん、外出する時は気を付けた方がいいね。身分を隠して何かしてくる者がいるかも知れないよ」


「その時は、ケンちゃんがスグに【転移】して助けに来てくれるでしょ。私の騎士ナイトなんだから」


「うん、任せて!」



「ママ、私も助けにいくよ」


「ありがとう、スズちゃん」



「キュルキュルッ!」


「ピーちゃんもありがとうね」




 1学期最後の課外授業の日が来ました。

 学校の校庭に集合して、パーティ毎に出発します。


 女性担任教師のターニャ・ハルトシュルール先生が皆に説明しました。


「ダンジョンの1階の奥深い所に宝箱が有ります。その中に『攻略証明書』が入ってますから、それを持って帰ってください。モンスターが出ますし簡単な罠も有ります」


「「「は~い」」」



 学校からダンジョンまで20分程歩くと着きますが、私達のパーティは馬車で向かいました。

 どちらでも良いのですが、アレクシス第1王子が一緒なので、先生から馬車を推奨されました。



 10分後、私達は馬車の為に、クラスで最初に入口に到着しました。


 ブランくん・レクシ王子・私・グレーテちゃん・モモちゃんの並び順でダンジョンに入ります。


「メモ帳に地図を書きながら進みましょう」

 と王子が言いだしました。


「それでは、私とグレーテが書きますね」


「はい、お願いします」



 二股や小部屋、突当りや十字路がありますので、メモに書き込みながら進みます。


「グレーテちゃん、ちょっと見せてくださいな」


「はいっ」

「プッ!」


「な~に? ちょっと、マリーのも見せてください」


「はい」

「ひっ!」


「まぁ、私の方が上手でしょっ!?」



「2人供、ちょっと見せてくれるかい?」

 王子が言った。


「「はい、どうぞ」」

「うっぷっ!」


「「まぁ、どう言う事ですの?」」



「……はぁ、まぁ何とかなるでしょう」


「「酷いですわ!」」




「レクシ王子、魔物が出ませんね」


「そうですねブラン、結構歩きましたが1匹も居ませんね」


「このフロアには、スライムと大ネズミとゴブリンがでる筈なんですけど」


「その内遭遇するでしょう」



 たぶん1階のほぼ全てをマッピング?しましたが魔物に遭いませんでした。


『マリエルちゃんを恐れて、低レベルの魔物が避けてるのね』


(エイルちゃん、そうなんだね! この事は黙っておきましょう)



 やがて、観音開きの大きな扉が有る部屋の前に来ました。

 ブランくんとレクシ王子がドアを開きます。


 ギギギギギィィィッ!



 教室ぐらいの広さの部屋の奥に大きな宝箱が置いてあります。

 宝箱の傍の壁に張り紙がしてありました。


『全員で宝箱の前に立ち、蓋を開けなさい』


 宝箱を開けると『攻略証明書』が入っていました、ブランくんが手に取り鞄にしまいます。



「これで任務完了ですね、帰りましょう」

 と王子が言いました。


「マリエル……」

 誰かに呼ばれて振り返ると、何も無かった壁にドアがあります。


「マリエル……」

 又聞こえました。



 私は恐る恐る近づいて、ドアノブに手を掛けます。


「ちょっと待ったぁ!」

 王子が私の肩に手を掛けた時、ドアノブが光りその光が私と王子を包みました。


 シュィイイイイインッ!


 迂闊うかつにも罠にはまってしまい、私達2人は何処かに【強制転移】させられてしまったのです。



「レクシ王子、巻き込んでしまってすいません」


「いいえ、起こってしまった事はしょうがありません。それより此処は何処でしょう?」


 私は、ステータス画面から地図マップを確認します。すると2人が居るところは、同じダンジョンの10階でした。


 グルグルグルゥゥッ、シャァァァッ。


 その時、通路の角からラミアが3匹現われました。



『ケンちゃ~ん、スズちゃ~ん!』

 私は念話で2人を呼びます。


 シュィイイイイインッ!


 地面に魔法陣が現れて人影が浮かび上がりました。



「ぽっちゃりさんが多い県はど~こだ?」


「フクヨカ県!」

「正解!」


 ピーちゃんに跨った、ケンちゃんとスズちゃんが【転移】して現われました。



「ナゾナゾ解いてる場合じゃないのっ! 魔物を倒してちょうだい!」


「オッケー」

「は~い」

「キュルキュル」



「ラミアに【火弾】ファイヤーボーール!」


 ボボボボボッ、ドドドドドオオオンッ!

 ヒギャアアアアアッ……、


 魔物達をケンちゃんのMP3倍の【火弾】連打が襲い、魔物は一瞬で全滅しました。



「ケンちゃん、ありがとう」


「う~む、無詠唱で【火弾】を連発して、ラミアを倒すクマのヌイグルミとは!?」


「レクシ王子、そこに関心してる場合ではありません」


「そうだけど、凄いファイヤーボールだったね」



「紹介します。私のお人形のケンちゃんと、ペットのピーちゃんと、娘のスズちゃんです」


 2人と1匹は王子に最敬礼をしました。


「始めまして、王子のアレクシスです。宜しくね」


「「はい」」

「キュルキュル」


 3人は膝を曲げ挨拶しました。(ピーちゃんも)



「ケンちゃん、私とレクシ王子はダンジョンの10階に【強制転移】させられたみたいなの」


「ふーん、そうなんだ……でも、このレベルのダンジョンなら問題無いよね」


「ケンちゃんが言うなら、そうなんだね」


「うん、マリちゃん。巨大化お願いします」


「オッケー。『ケンちゃんオオキクナ~レ』」


 ググググゥゥゥンッ!


 ケンちゃんは、身長180センチぐらいの大きさになり、ブロードソードを取り出しました。



「オオゥ、凄いねぇ!」


「レクシ王子、私はこの子達とレオポルド領のダンジョンを10階迄攻略した事があるのです。高級クルーザーに乗ったつもりで安心してください」


「うん、どういう乗り物か知らないけれど、皆で力を合わせてダンジョンを脱出しよう」


「「「はい」」」

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