第23話 魔法学院の新入生

 10歳に成った私は、アストリア魔法学院に入学します。

 その為に王都アンディーヌにあるレオポルド辺境伯上屋敷(旧ウォルフ辺境伯上屋敷)に引っ越しました。


 ケンちゃん、スズちゃん、ピーちゃんも一緒に王都の屋敷に移りました。

 専属騎士のルイスと専属側仕えのジュディとメアリィも一緒です。

 ルイスとジュディの子供ルディくんもアンディーヌの屋敷に引っ越して、親子3人一緒の部屋を与えられました、結構広い部屋ですからご心配いりません。


 私は、15歳まで6年間魔法学院に通います。この国では15歳が成人年齢です。



 レオポルド家の屋敷から学院まで、馬車で20分ぐらいで着きます。

 上級貴族は歩かないのです、私は友達とお喋りしながら歩いて通うつもりでしたけど。


 これでは登下校のイベントが発生しませんわ。

 パンを咥えて走って、誰かと町角でぶつかったり。

 買い物袋から林檎が転がって拾って貰ったり。

 不良に絡まれて、助けて貰ったり。

 自転車で2人乗りしたり。

 ゲーセンで見知らぬ人と対戦したり。

 ファーストフードで道草したり。

 お決まりのイベントが全然出来ませんわ!




 入学式の前に実力判定試験がありました。

 入学試験では有りません、既に入学は決まってるのです。

 学校側が生徒の実力を知る為の試験です、クラス分けもそれで決まります。


 試験は学科試験と簡単な魔法実技でした。

 魔法実技は30メートル先の的に攻撃魔法を当てるだけです。

 私は【石弾】を1発でまとの中心に当てました。


 私のクラスはダイヤモンドクラスです。

 成績順にダイヤモンド・サファイヤ・エメラルドのクラスがあります。

 私はお茶会で知り合った公爵令嬢のマルグレーテちゃんと、一緒のクラスに成る事が出来ました。


「お早う御座いますマルグレーテ様」

「お早う御座いますマリエル様」


「どうぞ仲良くしてくださいね」


「こちらこそ宜しくお願いします」



 大ホールで1時間程の入学式のあと、教室に移動してホームルームで説明を受けます。

 その後、1人1人自己紹介をしました。


 私はクラスメートを見回します。

 アレクシス・ロゼリアル・アストリア第1王子。騎士団長の息子ロズガルド・トーランド。宰相の息子ブランシュ・ロッテンシュタイン。将軍の息子セフィロス・スネイブル。侯爵の息子レイモンド・アンダーウッド。


 これって、イケメンばかりで乙女ゲーの配役みたい。

 私はもしかして悪役令嬢? それともヒロイン? ただのモブ?

 実は、乙女ゲーに嵌った事が無いので分かりません。該当するゲームに心当たりもありません。



『ケンちゃん、この配役のゲームに心当たりある?』


 私は心の中で、屋敷でお留守番してるケンちゃんに話しかけます。


『う~ん、無いねぇ。俺ゲーム大好きだけど、さすがに乙女ゲーはやらなかったからなぁ』


『そう……弾劾・追放・粛清なんて事が起きない様に、皆と仲良くしないとね』



『マリちゃん、ヒロインは聖属性とか光属性の魔法が使える平民の子が基本の筈だよ』


『じゃあ、魔法適正イベントを待たなければ分からないわね』


『うん、それまで様子を見た方がいいね』



 授業は学科と体育と魔法実技が有るそうです。


 ホームルームの後、移動しながら学院内を案内されました。

 学院はとても広くて、隣に壁を隔てて騎士学校が有ります。

 反対側の隣には大学院と専門学校もあり、全体がアストリア学園都市として1つの街に成っています。



 その後、お昼休みに食堂の利用の仕方を教わり、ランチを食べました。

 私はマルグレーテちゃんと、ずっと一緒に行動してました。


「それではまた明日、ごきげんよう」


「ごきげんよう」


 上級貴族は、それぞれ待機していた馬車に乗り帰ります。

 学院の側に屋敷を持たない貴族や留学生等は、寮に歩いて帰ります。





 翌日から始まった魔法の授業では、まず魔法の基本知識を学びました。

 次の日からは属性魔法の説明も受けました。


 入学から1週間後、いよいよ魔法適正をクリスタルで調べます。

 一応プライバシーに配慮して、1人ずつ個室で調べる事になってます。


 私の順番になりました。

 担任教師の前で鑑定クリスタルに両手でふれると、複数の強い光が広がりました。とても眩しい光でした。


「まぁ!」


 若い女性担任教師のターニャ・ハルトシュルール先生が思わず声を発しました。


「こんなに強い光は初めてですわ!」



マリエル・ウォルフ・レオポルド

レベル20

HP100 MP100

職業 学生

【剣術】LV1

【投擲】LV5

【遠距離射撃】LV5

【魔法盾】LV1

【命中補正】LV5

【貫通力強化】LV5

【光属性魔法】LV6

【土属性魔法】LV5

【生活魔法】LV5

【調教】LV5

【ブラインド】LV5

【開眼】LV5

【鑑定】LV5

【復元】LV5

【修復】LV5

【錬金術】LV5

【採取】LV5

【鍛冶】LV5

【採掘】LV5

【薬師】LV5

【念話】LV1

ギフト『虹の橋ビフレスト』通行許可書

特記事項『女神の御親友』



 いつの間にか、スキルが増えてレベルも上がってます。

 私は俯きながら教室に戻りました。


「チートに成ってるかも……」


「えっ、マリエル様どうされたのですか?」


 マルグレーテちゃんが、心配そうに私の顔を覗き込みました。


「いいえ、何でもありません……」



「一緒に勉強して魔法を沢山覚えましょうね」


「はい……」




 ハルトシュルール先生が全ての生徒の鑑定を終えて教室に戻って来ました。


「皆さん魔法やスキルのレベルは5段階です。レベル5目指して頑張ってくださいね。それとなるべく沢山の魔法やスキルを習得してください。社会に出てから役立ちますよ」


(私の【光属性魔法】LV6だわ……どうしてでしょう?)


『マリエルちゃん大丈夫。LV5以上に上がりにくいだけで、誰でも可能性があるのよ』


(でも他のスキルもLV5ばかりで数も多いのだけど)


『それは、マリエルちゃんが遺伝や成長過程で得たものだから問題ないわ』


(そう……どうもありがとう)



『それにマリエルちゃんは私の親友として相応しい人間に成長してるから、必要なスキルはチートでもいいのよ』


(まぁ、ありがとう。エイルちゃんの期待を裏切らない様に頑張るね)


『は~い、気楽にホドホドにねぇ。じゃ~ね~』


(じゃ~ね~)



 光属性魔法の保持者はクラスに私しかいませんでしたし、平民のクラスメートもいませんでした。

 結局、同学年に光属性魔法適正者は私だけだったのです。


 光属性魔法って、そんなに希少だったんだ!

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