339 スケジュール調整
「ジン様お疲れ様でした。ひとまず魔族が撃退できてほっとしています」
城に戻ったらセルジュ様がねぎらいに来てくれた。
「今日の相手は弱くて助かりましたね。
聞いてたような魔族ばかりだったら俺も対処できるか自信がありませんでしたから」
これは正直な気持ちだ。
俺以外に対処出来ないであろう事が分かっていたので引き受けたが、普段の俺なら受けずにリリアと一緒にザパンニ王国に行っていただろう。
だけど、Sランク冒険者が何人か行方不明だという事も考えると、俺だけが襲われないというのも考えにくい。ならば最初から敵対して倒してしまえ、というのが俺の本音だ。
一応セルジュ様には1年の期限を設けたが、魔族を倒さない限り狙われるのであれば1年をすぎても平穏な生活は戻ってこないだろう。
だから1年という期限には本来意味がないんだけどね。
1年もすれば他の国からの援軍が到着するって言ってたけど、強い魔族にどれだけ意味があるか分からない以上、俺が離れる訳にもいかない。
「ですが、あれでも魔族に変わりはありません。この戦果は既に街中に広めています。ジン様の名前も出しましたが問題ありませんでしたか?」
いや、広める前に相談しようよ。
俺の名前が広まってまずい事ってなんだ?襲われるのはほぼ確定事項だし名前バレしも問題ないのか?
「そうですね。大丈夫でしょう。
最初に来たという魔族が出てきてくれれば助かるんですけどね。強力な魔族を倒して戦力を削ればいつかは攻めてこなくなるでしょうし」
「そうですね。
ジン様の名前とSランク冒険者の名前は有効に活用させていただきますね」
え、他にも俺の名前使うの?
「はい。冒険者から防衛隊への参加希望が相次いでいます。
正直兵士が足りない状況でしたので助かります。今度兵士の慰労にも参加してくださいね」
そうきたか。
まあどうせ兵士に頑張れっていうだけだろうし、いいんだけどね。
「それでジン様の好みを聞かせていただいてもよろしいでしょうか?やはりリリア様のような可愛い感じがよろしいでしょうか?それともマリアさんのように健気な感じが?クレアさんのように凛々しい感じでしょうか?」
「えっと、それは何の好みでしょうか?」
「女性の好みです。教皇様からはジン様は戦闘で滾っていらっしゃるから女性をあてがうように言われています。
本当は文官が聞きに来るのが筋なんですが、魔族討伐の英雄であるジン様に下世話な話を聞くのも憚れるみたいで」
いや、セルジュ様が聞くほうが問題あるでしょう?!
っていうか、女性を手配されても困りますからね!これでもリリアと結婚してるんだから!
「そうですか。自薦他薦と多数の応募があったのですが。娼館から手配しても良いのですよ?」
「いや、そういう意味じゃありませんから。女性は結構です」
「そうですか。必要になったらメイドにでも言って下さい。すぐに手配させますので」
いやあ、セルジュ様とこんな話をする日が来るとは思ってなかったな。
その後、文官が訪ねてきて、今後の防衛に関しての詳細を詰めて行った。
俺は騎士などの配置には関係ないので主に待機する場所や時間などが主だ。部屋にいる時間や風呂に入る時間まで決めておかないと、いざという時に、どこに報告すれば良いのか分からなくなるからだ。
「それでは風呂ではお世話の侍女は不要という事ですね」
「ええ、風呂に限らず、お世話は不要です。夜の女性も含めて」
「そうですか。承知しました。
それでは部屋に配置するメイドに関してですが、、、」
「それも結構です。自分の事は自分で出来ますので」
「いえ、これは置かせて下さい。お世話だけでなく、連絡やスケジュールの管理なども仕事に含まれますので。お世話が不要ならそう言っていただければ結構ですので」
「はあ、分かりました」
なんだが見張られてるようで気分は良くないけど、連絡しようと思った時に自分で動いてたんじゃ、わざわざ待機場所や時間まで決めた意味がなくなるからね。
「あとは普段の訓練などに関してですが、やはりSランク冒険者だとそれなりに広い場所が必要でしょうか?」
「普段の訓練ですか?」
普段の訓練なんてやってないからな。魔力の循環くらい?
「ええ、いくら冒険者が訓練をしない職業だとはいえ、一年も部屋に籠っていたら体がなまるでしょう?でしたら最初から訓練の予定を組んでおいたほうが私どももやりやすいという物です」
別に必要ないんだけどな。でもまあストレスの発散という意味でちょっと場所を開けておいてもらおうかな。
「広い必要はないですが、丈夫な的を用意してもらえるとありがたいですね。やわい物だとすぐに壊れますので」
「丈夫な的ですね。承知しました。ミスリルで覆った立木を用意しましょう」
それって既に立木じゃないよね?!
「費用的な問題はありません。材料も国で押さえている分でも十分に賄えますので」
いやそういう意味じゃ、、、まあ良いか。
「それでは予定を変更する場合は事前にお知らせください」
そう言って文官は帰って行った。
メイドさんが隣の部屋に控えてるのが気になるけど、もう寝るか。
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