325 護衛依頼


「じゃあ、元気でな。

 今回の依頼が終わったらオーユゴック領まで迎えに行くから。

 依頼の予定は一年だ。また一年後に会おう」


 そう言ってメアリーとリリアを送り出した。


 俺とセルジュ様、そしてマリアとクレアはイングリッド教国に行くのでメアリーとリリアとは別の馬車で行くことになる。

 今のこの街の状況では乗合馬車なんて出てないからほとんど買取りみたいな形になってしまった。



「さあ、セルジュ様、俺たちも行きましょうか。陸路でよかったんですよね?」


「ええ、今はこの港から出る船は全部獣人大陸に向かっていますので、クレイア、イングリッド教国の港町ですが、まで行く船はありませんわ」


 じゃあ俺たちも準備するとしようか。

 実はリリアたちの馬車を手に入れるときに、俺たちの分も手配しようとしたのだが、2台はなかったのだ。だからまた一から探さないといけない。


「もう少し街が安定するればこの街を治める貴族から馬車を借りれたでしょうけど。。。」


「まあ仕方ないですよ。地道に探しましょう。多少高くなるかもしれませんが、商人ギルドにあたってみましょうか。運が良ければ護衛依頼を受けれるかもしれませんし」


「そうだと良いのですけど」


 まずは冒険者ギルドで確認するか。




「すいません、ベスク王国向けの乗合馬車、もしくは護衛依頼なんかないですか?」


「はい、初めての方ですね?ではこちらに名前と特技を書いてください。あ、出身地もお願いしますね」


 渡されたのは冒険者登録用紙だ。


「いや、登録じゃないですが」


「あれ、でも見ない顔ですね。獣人大陸にいかれる方ですか?それならあちらの窓口で船の手配をしていますので、この窓口じゃないです」


「いえ、単純にベスク王国に行きたいだけなんですが、あ、これギルド証です」


「げ、Sランク!

 申し訳ありません!それで、ベスク王国への乗合馬車でしたか、すいませんが今はありません。

 街中での依頼もほとんどありませんし、この街の冒険者ギルドは船の斡旋で持っているようなものです。

 あ、盗賊退治の依頼なんかどうですか?治安が悪くなってますので、盗賊退治の依頼ならいくつかありますよ?

 昨日新しい領主様から出された依頼です。どうですか?」


 いや、結構急ぎでイングリッド教国に行きたいから盗賊退治の依頼なんか受けてる暇はない。


「じゃあ、馬車を購入できませんか?できれば四人乗りが良いんですが」


「馬車ですか。ほとんどは商人が街を出るときに持っていってしまったので探すのは難しいと思いますよ。

 あ、でも商人ギルドなら扱ってるかもしれません」


 やっぱり商人ギルドか。リリアの馬車見つけるのも難しかったからな。


「じゃあ商人ギルドに行ってみます」


「盗賊退治は後で報告でも構いませんからー。退治したら報奨金とりに来てくださいねー」


 後ろでまだ未練ありがな勧誘をしているが、もうここには用はない。




「馬車はありませんか?もしくはベスク王国への護衛でも構いませんが?」


「冒険者ですか?でしたら王都ベスラートへの護衛があります。ギルド証を見せてもらっても構いませんか?」


「はい、こちらです」


「Sランク!失礼しました。Sランクでしたら是非ともお願いしたいです。

 現在冒険者ギルドで護衛の依頼を出しても、皆が獣人大陸に向かうために集まっているので、反対向きの護衛は引き受け手がいないので、自分たちで探していた所なんですよ。

 護衛をつけずに移動するという案もあったのですが、昨今の盗賊の増加によって、魔物よりも危険な道中になっていますので、諦めてた所です。

 ギルドマスターを呼んできますので少しお待ちください」


 うんうん、ギルドの受付はこうでないと。探索者協会の受付をは雲泥の差だ。



「私がギルドマスターをやっていますシグルドと申します。Sランク冒険者のジンさんでしたな。

 今回は何人もの商人が集まったキャラバンとなります。

 すでにお聞きかと思いますが、護衛が雇えない可能性が高かったので、少しでも安全に移動しよゆと一塊で移動する予定だったのです。

 そのキャラバンの護衛となりますが、よろしいですかな?」


「問題ありません。行き先と期間と報酬を相談させてください」


「はい、行き先はベスク王国首都ベスラート。期間は20日。報酬は金貨1枚でいかがですかな?」


「途中の食事などはどうなりますか?」


「商品を詰め込んでいるので、食料に余裕はありませんので、各自で調達ということで」


「それならもうちょっと報酬が欲しいですね。

 ああ、荷物の一部を俺が運ぶということで割増になりませんか?」


「もしかしてアイテムボックス持ちですか?!

 いやあ、これは運が良い。是非お願いしたいですな。

 馬車一つ分で金貨3枚でいかがでしょうか?」


「申し訳ありませんが、馬車一台分は容量的に無理です。半分ならなんとか」


「ええ、じゃあ依頼料と合わせて金貨3枚でいかがでしょうか?」


「それなら良いです。出発はいつになりますか?」


「明後日の朝一を予定しています」


「わかりました。では明後日もう一度きます」


 なんとか目処は立ったな。


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