304 山脈への旅路
「私も行きます!」
「私も!」
「私も!」
どうぞどうぞ?は無いか。
「でも山脈沿いに旅するだけだぞ?何も無い場所だし。王都でゆっくりしてても良いんだぞ?」
「そう言ってはどこかに行ってしまうじゃ無いですか!妻として一緒に行きます!」
「私もですわ。妻候補としてご一緒しないと」
「わ、私も奴隷としてお支えしている以上一緒にいく義務があると思います!」
「そその私も、、、」
気持ちは嬉しいけど、旅行じゃ無いんだよ?ドラゴンが出てきたらどうすんの?
「出てくる可能性は低いんでしょう?それに逃げるくらいは出来ますわ」
リリアさんや、その低い可能性で死ぬこともあるんだよ?
「ジン様が一人で何年も帰ってこないよりはマシです。前回も前々回もなぜ一緒にいなかったのか、自分が許せません!こんな思いをするくらいなら危険でも一緒に行きます!」
「そ、そうか。まあ、危険なら逃げるようにな」
あ、許可しちゃった。
「「「「やった!」」」」
ん?なんか全員が喜んでるな。
「あれ、メアリーを許可した覚えはないぞ?」
「え、連れて行ってくれないんですの?私だけ除け者ですの?いじめですか?」
「いや、いじめてる訳じゃ、、、」
「じゃあ、良いんですよね?!そう言ってください!私だけ留守番なんて嫌ですわ」
まあそこまで言うならついてきても良いけど。王都でティーゲルさんと一緒に待っててくれても良いんだけどね。
と言う事で、北の山脈にきました。途中はどうしたかって?楽しくキャンプです。
人族の大陸と違って、魔物は基本的に自分たちのテリトリーから出てこないし、盗賊は人の少ないルートには出ない。俺たちが向かうのは北の山脈、何も無い、誰も行かない場所だ。つまり、敵が出ない。
もちろん警戒は必要だけど、見渡す限りの荒野で、非常に見通しがいい。それこそ空を飛ぶ魔物でも出ない限りは多少油断してても大丈夫だ。
「それでぇ、ジン様ったら私に甘えてきちゃって、ふふふ。夜のジン様は可愛いんですよ」
リリア、それは言っちゃダメな内容だ。って、何昼間からワイン飲んでるの?!いくら暇だからってアルコールはダメでしょう?!
「うふふふ、私の時は激しくって、、、」
いや、メアリーとそんな関係になった事ないからね!
「いえ、もちろん一人で妄想ですが、、、」
紛らわしい話を混ぜるんじゃない。って言うか、一人の妄想って乙女がそんな話しちゃダメでしょ?って一人でしてるの?
「私の場合は、、、」
マリアは乗らなくてよろしい。
「わ、私は、その、、、」
クレアもいいよ。酔っ払いの戯言なんだから。真面目に取り合ってると疲れるよ?
「、、、って訳なんですよ。ジン様はもっと私を構うべきです!」
おぅ、リリア、まだ話してたのか。しかも俺への愚痴になってるし。
「ジン様には2日に1度を要求します!」
なにを?!
「ぎゅっとしてください!」
はいはい。そんな事で良いなら。もっと深い意味でとっちゃったよ。ごめんね。
「そしてキスしてください!」
はいはい。そのくらい良いよ。一応結婚してるからね。
「そして押し倒してください!」
はいは、、、え?いや、もっとソフトな話だったよね?
「そして、、、」
待った待った。それ以上はいけない。親しき中にも礼儀あり。いくら仲間でも言って良いことと悪いことがあるよ?酔ってるからって許さないよ?
「ジン様」
何、マリア、こっちは忙しいんだけど?
「戻ってからの事は考えてるのでしょうか?」
「戻ってから?何かあったか?」
「発情期です」
おぉ、もうそんな時期か。
「山脈で3ヶ月ほど過ごしませんか?去年は一番ひどい時期を旅してごまかしましたが、今年は巫女としても冒険者としても有名になっています。旅してごまかせるとは思えません」
「そうか。この依頼がなかったら一度人族の大陸に戻ろうかと思ってたんだけど。確かに発情期は厄介だな。あれってどうにか出来ないのか?」
「これまではむしろ人口を増やすために盛大にお見合いをやったりしてたそうです。なので制限するような研究は行われなかったとか。今年からは人族との国交などもありますので、対策を検討しているようですが」
それはそうか。人族に発情期はないからな。いや、ないと言えば聞こえが良いけど、万年発情期という言い方もできるな。まあどっちでも結果は一緒なんだが。
「なら山脈の麓にいい場所があったら少しゆっくりするか。食料は持ってきてるな?」
「もちろんです!1年は持たせて見せます!」
マリアが心強い。
クレア?周囲の警戒してるよ。真面目だね。
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