267 幽霊屋敷
「この依頼を受けられるんですか?」
「ええ、何か問題でも?」
「いえ、魔力の無いあなたが行っても何も出来ないかと思いますので。もしアンデッドに殺されたらアンデッドのおかわりなんて事にもなりかねませんし」
「一晩過ごすだけなので、それほど問題ないかと思うんですが?」
「まあ、アンデッドの可能性を理解しているなら私からは言う事はないです。依頼の受注は受け付けました。こちらが依頼主の住所ですので先に話を聞いてから向かってください」
俺は住所の書かれた紙をもらい、ギルドを出る。
途中で買い食いしながら向かうと、どうやら貴族街のようだ。確かに屋敷を持っているのだから商人か貴族だわな。獣人の貴族事情には詳しくないが、人族とは違う感じだろうか。偉そうな態度のやつだとやる気が削がれるんだが。
「あんたが依頼を受けてくれた探索者かい?私はユンベルというしがないババアだよ。
今回の屋敷は私の爺さんが立てた屋敷でね。死んでからは父親が管理してたんだけど、その時から幽霊が出てたんだよ。実害がないからと放って置いたらだんだんと行為がエスカレートするようになってね。今じゃあ、一晩過ごすのも命がけなんだよ。
とにかく一晩安全に過ごせれば、行為が落ち着いたと判断するし、途中で逃げ帰ってきたらその程度で判断するつもりだよ。
前に頼んだ探索者は日没から2時間で逃げ帰ってきたからね。あんたも危険だと思ったら早い目に逃げるんだよ。こんな事で命を落としたら浮かばれないからね」
ユンベルさんは上品な白髪のお婆さんだ。言葉は少し悪いが俺の事を心配してくれているのがよくわかる。
「幽霊を解決したかどうかはどうやって判断するんですか?」
「そんなの他の探索者に一晩行かせればすぐにわかる事さ」
そりゃそうだ。
まあ条件は分かった。ならば夕方からいけば良いだろう。
「わ、私、ちょっと体調が優れなくて、、、」
「私は足が痺れてるので無理ですわ?」
「そ、その、睡眠不足で、、、」
君たちそんなに行きたくないのかね?
「だって、幽霊ですよ?!剣で切っても死なないんですよ?酷いのになると生きながらに干からびるんですよ?!」
いやまあ、そういうアンデッドもいるかもしれないけど、<光魔法>で浄化すれば終わる話だよ?
「冗談じゃありません!生理的に受け付けませんわ!」
どうやら実体のないアンデッドは苦手なようだ。女性だからかな?
「分かった分かった。俺だけで行くからお前たちは宿でゆっくりしていろ」
「あの、ジン様、申し訳ありません。私も先ほどから頭痛が酷くて。。。」
ああ、マリアも行きたくないのね。無理に連れて行かないから大丈夫だよ。
俺はマリアの頭を撫でで宿をでた。
さて、今日は徹夜になるだろうから夜食でも買って行くかね。
「おっちゃん、串焼き3つ。それと、あそこの幽霊屋敷のこと知ってる?」
「おお、あそこな。有名だぞ?なんでも調べに入った役所の奴らが取り殺されたとか。本当かは知らんが、探索者でも逃げ出すほどだそうだぞ」
「へえ。そんなに危険なんだ?」
「よくわからんが、このあたりの奴は誰も近付かんよ。ほれ3本」
「そっか、ありがと」
ふむ。どうやら幽霊屋敷は有名らしいし、役所も手を焼いていると。実は解決の金貨10枚って安いんじゃ?
夕方まで時間を潰すのも面倒だったので、まだ日があるが屋敷に入ってみる事にした。
バーン!ガシャーン!
はい、ラップ音ですな。音が鳴ってる割には何も壊れていない。
まあ日のあるうちはこんなもんか。現段階ではアンデッドか邪妖精かの判断はつかないな。
キャー
キシッキシッ
ギィィー
いろんな音がするが、いちいち反応していたらキリがない。
俺は食堂と思われる場所で持ち込んだ串焼きを食べていた。腹が減っては戦はできぬ。光と闇の魔法は魔力だけでなく体力も消耗するように感じるのだ。そんな統計はなかったはずだが、使ってみての感想だ。
そろそろ良いか?日も暮れてきたし、屋敷を巡回してみようか。
まずは一階。今いた食堂は問題ないから他の部屋を確認しよう。
風呂、は問題ないな。何故か水が張ってあるが気にしたら負けだろう。床も濡れてた気もするが。
応接室。これも問題ないな。ソファーが明らかに刃物で切り裂いた跡があったり、ローボードの上にワインが溢れてたりと言った状況があったが、まあ前の主人が残したのがそのままなのだろう。前に住んでたのって何十年前だっけ?まだ乾いてないのが不思議だね。
玄関ホール。うん、何故か閉めたはずの扉が開いてるが、風でも吹いたかな?ちゃんと閉め直しておこう。
キッチン。おや、まな板に肉が置いてあるな。あれはオークの手か?人の手って事はないと思うんだが。
ドンっ
うん?何かが飛んできたような気がするが、、、後ろを向いても何も、、、包丁があるな。壁に刺さっている。さっきまではなかったような気がする。
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