248 チンピラ
「リリア、そうじゃない。魔力を一定の形にまとめるんだ。ただ放出するだけだと魔力を無駄にするだけだ」
俺はリリアに魔力障壁を教えていた。
マリアとクレアは拙いながらも障壁が張れるようになってきたので自習だ。
「メアリー、真面目にやれ。リリアがやるなら自分もやると言ってただろう」
「でも私戦闘はしませんし。。。」
「パーティーに入る時に魔法が得意だとか言ってなかったか?魔力障壁じゃなくても魔法の障壁くらい張れるだろう?」
「張れますけど、あんなに弱いのでは戦闘では役に立ちませんよ?」
「だからそれを強化するんだろうが。さあ、もう一度最初から」
一応メアリーも障壁を習得すると言うことにはなっているのだが、あまり乗り気ではないようだ。セリフからも分かるように、障壁を使えはするんだけど、弱い。
矢でさえ止めれないのだ。メアリーは火と水が使えるのだが、火だと普通に貫いてくるし、水は密度が薄いのか、角度を変える程度の役目しか果たさない。それでも十分なんだけど、メアリーは使えない魔法だと考えているようだ。
「ジン様、出来ました!」
マリアが嬉しそうに報告してくる。
見ると、30センチ四方くらいの魔力障壁が出来ていた。
「お、良いぞ。結構な密度じゃないか。どの位魔力を注ぎ込んだんだ?」
「はい、半分くらいです」
「あー、そうか。ちょっと使いすぎだな。ちょっと密度を下げてみようか。1割くらいで使えるようにやってみてくれ」
一度で半分も魔力を使っていたら一回の戦闘で魔力がなくなってしまう。
クレアは、、、まだだな。小さくはなっているが、密度が薄い。もうちょっと魔力操作が上手くなれば良いんだが。確か魔力操作のスキル持ってるよな?
さらに一月もすると全員が実用レベルの魔力障壁を張れるようになった、、、と言うのは嘘でリリアの障壁が全く出来てない。これは相性だろうか?魔力を集中できずに無駄に放出してしまうのだ。
まあ、リリアはダンジョンに潜らないので構わないと言えば構わないのだが、一人だけ使えないのもかわいそうだ。これから頑張ってくれ。俺たちはダンジョンに潜ってるから。
マリアとクレアが8級になったことで、10日に6日潜れるようになった。
階層も3層までは地図が出来、いつでも4層に行ける状態だ。
ただ、現状地図に沿って移動するだけでも片道1日かかっている状態なので、4層に進出するべきか悩んでいる。
階層を潜るごとにダンジョンが大きくなり、次の階層への階段が見つかりにくくなっているのだ。
「今日は4層をちょっと見てから戻るとしようか。何回か戦闘したら戻るからそのつもりでな」
「「はい!」」
4層程度なら時間をかければ攻略できると思うが、階層ごとに一度に出てくる敵の数が増えているので、戦闘に時間がかかるようになってきた。そしてそれに伴って疲労も蓄積するので、余計に攻略が遅くなっている。
他の探索者がどうやっているのかと受付で聞いたところ、深く潜る人は、ポーターを雇って、結構な人数で潜るそうだ。
途中でキャンプを作り、食料の運搬などを行い、ちょっとずつ攻略していくそうだ。そんなに人数を揃えてたら一人当たりの収入なんて知れてると思うのだが、当たりを引いた時は大儲けになるそうで、当たりを引くまではトントンで十分らしい。
ダンジョンは当たりが出れば出るほど、メインパーティーの収入が増える仕組みだそうで、攻略の勢いは衰えないそうだ。
俺たちにはそんな人脈なんてないから、自分たちで物資を運ぶしかない。
なので、食糧などが運べる量に限界がある、、、のが普通なのだが、マジックバッグがあるのでそれほど苦にならなかったりする。
いざとなれば俺のインベントリに入っているオークを出しても良いし、表面を取り繕うために食料を制限していると言っても良い。
ただ、マジックバッグは獣人大陸では希少品らしく、目をつけられている節もある。
盗賊ギルドというものは存在しないそうだが、どの世界にも裏の世界というのはあるもので、狙われる可能性があるから気をつけるようにと受付からは忠告されていた。
ある時はスリを装って、ある時は夜に不意打ちで襲ってきたりと、チンピラのようなやり方をしてくる。正直裏の世界を名乗るならもうちょっと考えて欲しい。
最近は意地になってきたのか、ダンジョンの中で襲われることも出てきた。
もちろんチンピラが入れる程度の階層なので、1-2層当たりだが、行き帰りを待ち伏せて襲ってくる。どこで俺たちの位置を把握してるのやら。何か荷物に仕込まれるのかな?俺の魔力感知には何も反応がないが。。。
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