230 旅
晩餐会の後、メイドさんが案内してくれて馬車に乗って街を出た。
一応リリアには事情を説明しておいたが、十分に理解してくれたかは疑問だ。
旅に同行してくれるのは男性騎士。女性では襲われる可能性があるため、念を入れての配置だ。
「ジン殿、そろそろ昼食にしましょうか」
話しかけてくれたのは護衛の騎士の代表のヒラクさんだ。
旅に出てからずっとお世話になっている。村にも寄らない徹底ぶりの予定なので、食糧とかはヒラクさん任せだ。
「昨日から何も食べられてないでしょう?少し多めに用意しますので、食べた後、仮眠を取ってください。馬車の中ですのでそれほど快適ではありませんが」
言わないけど、さっきまで寝てました。一人だけすいません。
「ありがとうございます。皆さんも昨夜は寝れてないでしょうから今日は早めに休みましょう」
「了解です。旅は10日ほどを予定していますので、無理は禁物ですからね」
10日か。種族会議がそれくらいだと聞いてるから、終わったらすぐに帰る感じかな。
旅とはいうが、場所を移動してのただのキャンプだ。
俺はこの時間を利用してスキルについての検証を行うつもりだ。魔法関連のスキルが訓練もしてないのに上がっているのだ。全体的に2つほど上がっている。タイミング的には転移に巻き込まれて世界の端に飛ばされ、創造神様と会った時からだろうか。
無論循環はずっとやっているので、上がること自体はおかしな事ではないんだけど。
俺は各魔法の弱く、周りに影響のない範囲で使ってみる。やはり威力が上がっている。<火魔法>でライター程度の火を出すつもりがガスバーナーみたいになっている。
創造神様と会ったときは魔法のレベルがちょうど20だったので、その絡みもあるかもしれない。
一般的にLv10までが限界なのだとしたら、倍のLv20で何かあってもおかしくない。
Lv10毎に威力が増すという推論はどうだろうか?いや、それではLv10で威力が上がらないのはおかしい。ん?Lv10以降、<風魔法>以外に使ったかな?
俺は魔力の循環関連でしか今までレベルを上げてない。なので、実践で使っているのは<風魔法>くらいだ。だから<火魔法>のように分かりやすい指標がなかっただけかもしれない。
威力はLv10毎に上がると仮定して、何もしてないのに上がるのはどうしてだろうか?
創造神様と会うとレベルが上がりやすくなる?確かに普通は神様と直接会うなんてないだろうからそういう事があってもおかしくないかもしれない。
神様は言ってみれば、世界の法則そのものだ。それに接することによって、事象に干渉する能力が増進されたのだとしたら。。。
推測に過ぎないが、それだと、これからも何もしないでも上がっていく事になってしまう。これではレベルは上がっても検証にはならないんじゃないだろうか。
創造神様もレベルの上限を知らないようだし、自分と俺が接触する事でこういう現象が起きるということも分かってないのかもしれない。
推論に推論を重ねたが、今のところこれが最有力だ。
それに最近になって気づいた事がある。魔力が軽いのだ。いや、魔力に重さがあるのかという指摘はよく分かる。だけど、常に魔力を循環させている身としては、魔力の動かしやすさを軽さと感じるのだ。
そう、魔力の循環が楽になってるのだ。最初は魔力の循環にようやく慣れたのかと思っていたが、創造神様関連の推論を思いついたら、これも影響の一つなんじゃないかと考えるようになった。
魔力に質があるとしたら、軽くなったこれはまだ魔力なんだろうか?
俺は魔力とは均質で不変の存在だと思っていた。でないと、人によって魔力が違うという事になってしまう。魔石だって一つ一つが違う性質を持っていたら使いづらいだろう。
さて、事実を受け止めた上で推論を検証するとなると、やはり魔力を魔力としてそのまま使ってるのが一番だろう。魔力の質が変わっているのならば、何か変化があるだろうし。
俺は普段使わない、肉体強化を使ってみる。魔力を筋肉や眼などまで循環させ、強化する魔法の一種だ。属性にはないが、無魔法の技術だ。
体と循環させている魔力を範囲を広げて筋肉や各種臓器まで広げていく。これで体全体に魔力を覆った事になる。
魔力が漏れているのが分かる。これが無魔法が流行らない理由だ。魔力の消費が激しい。Sランククラスになると魔力もそれなりにあるので、全力で戦うときには必須の技術だ。
漏れた魔力が薄く光っている?どうやら漏れている魔力が薄い光を出しているようだ。今まで肉体強化を使ってこんな現象が起きたことはない。
魔力が漏れさえしなければ常時まとっておける便利な技術になるんだが。お、意識したら魔力の流出が減った。
純粋な魔力が色を持つというのはどういう事だろうか?<光魔法>なら分かる。だけど、ただの魔力が光る理由は?
どうやら俺の魔力は他の人の魔力と違ってきてるらしい。レベルのせいなのか、創造神様と会ってしまったせいなのか。
何にせよ、肉体強化を使うたびに光っていたら、戦闘で使いにくくて仕方ない。さっきは意識したら魔力の流出が減ったので、魔力が流出しないように訓練するのが良いな。
レベルが上がりやすい事も、魔力の質がおかしい事も不思議ではあるが、今の俺がそうなのだからどうしようもない。ここは隠す方向で行こう。魔力の運用にこれまで以上の訓練が必要だな。
この旅の間に肉体強化を使っても光らないように出来れば良いんだけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます