229 貞操の危機
リリアさん、その男は誰ですか?鼻の下伸ばしている男と話すんじゃありません。
どうやら繁殖期は女性だけではないようだ。
男性の方が少なくて有利なら同じ獣人を対象にしなさい。リリアは譲りませんよ。
俺はこんなに独占欲強かっただろうか?発情期に当てられたのかもしれないな。
「リリア、少し話があるんだけど」
「あら、ジン様、こちらの男性はジョアン様と言って、子爵家の次男らしいですわ。私を嫁にと誘われたんですの」
この目はからかってるな。
「ジョアン様、リリアは俺の嫁です。離れてください」
俺って、リリアを嫁って言ったの初めてじゃないだろうか。
「おや、相手が決まってたんですね。失礼しました」
ジョアン様はさくっと諦めて去っていった。選べる立場だから引き際も心得ているらしい。
「ジン様ったら嫉妬してくださったんですのね。嬉しいですわ」
やっぱりからかってるな。こんなの俺のキャラじゃないのに。
「あの、ジン様ですか?!是非ダンスを踊ってください!」
俺は今リリアと大事な話を。。。
ん?
振り返っても誰もいない。
「こっちですわ!」
下の方から声が聞こえる。まだ小学生くらいの女の子が俺に話しかけている。
もしかしてダンスに誘ったのってこの子か?
「やっと見てもらえましたね。さっきから声をかけてたんですよ?」
すいません、リリアの事で頭がいっぱいでした。
「まあまあ、可愛い子ね。お名前は?」
「はい、ジュリアンと言います。ライアン父様の娘です」
「あら、領主様の。ジン様、ダンスは断れないようですわよ?」
リリアが笑っているが、目が笑っていない。だけど、ダンスは断れないんだよね?
「喜んで」
俺はジュリアンちゃんをエスコートしてダンス会場に行く。
ジュリアンちゃんはちゃんとダンスを稽古しているようで、大人顔負けのダンスを踊った。なんなら俺がエスコートされてるくらいだ。
ちょっと背の高さ的に無理があったが、下手な相手よりも踊りやすい。
「それで俺に何か話があったんでしょう?」
ダンスを踊りながらジュリアンちゃんに話を促す。
「ええ、ジン様はこの晩餐会がお見合いだとご存知ですよね?」
「先ほど初めて聞きましたが、はい」
「ジン様を本気で射止めようとしている方も多いんですよ?
今踊っていて思うんですが、ジン様は筋肉もしっかりしてますし、体幹もずれません。私と踊るのは体格的にしんどいはずですのに。
さっきまで女性と踊っていましたが、みんな、ジン様がどれくらい強いかを確認してたんですよ?
その上でお聞きしますが、誰か気に入った方はいらっしゃいましたか?」
「いえ、特には」
「では、早急にこの領地を離れることをお勧めします」
「また何故?」
「今は発情期です。お相手のいる方はいいのですが、いない方が問題です。
こうなんと言いますか、悶々とされるのです。そんな所にジン様のようないい男がいますと、襲われてしまいます。
特にジン様は何か、他の男性とは違う匂いを発せられています。それが余計に興奮するのです」
なんと、俺の匂いが発情させてしまうのか。
え?じゃあ、この領地以外でもヤバイのでは?
「そうです。他の領地でもあまり良くありません。
できればこの時期はどこにも寄らずに旅をしているのがいいと思います。
私はまだ発情期を迎える年齢ではありませんので大丈夫ですが、適齢期の方に影響が大きいと思われます」
俺の体からフェロモンか何かが出てるのだろうか。
もしかして、今回の旅はそのせいかな?俺の身の安全を考えて長旅を提案してくれたのかもしれない。後でフェリス様に確認しよう。
「という話をジン様にしておくようにと、父上から言われておりました」
「ライオス様が?」
「ええ、父上も現在の男性の数の少なさには懸念を抱いておられますので当て馬としてお呼びしましたが、だからと言ってジン様の貞操を対価にはできません。
今日の深夜、晩餐会が終わった後、馬車を用意してありますので、しばらく近くを旅していてください。今回の種族会議が終わったあたりで戻ってきていただければ大丈夫です。
フェリス様には話が通っていますので、安心してください」
なんと、そこまでするほどヤバイ状況なのか。
「わ、わかりました。晩餐会の後すぐですね?」
「ええ、一晩でもこの街で過ごされると、襲われる可能性がありますので」
これはいかん。晩餐会が終わる前に出発するわけにはいかないのかな。
「それを早めることは。。。」
「晩餐会の途中で抜け出されますと、いなくなったのに気づく方が出てきますので、逆に危ないかと」
「な、なるほど。では晩餐会の後ですね。他の仲間は。。。」
「申し訳ありませんが、他の方も一緒だとどうしても情報が漏れてしまいますので。。。」
「そ、そうですか。では晩餐会の後に」
どうやら待った無しの状況のようだ。
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