204 奴隷解放


 南に向かう船は潮流に逆らうのか、2週間かかった。

 どうやら獣人は魔法がそれほど得意では無いらしく、<風魔法>をうまく使えてなかった。


 ガレー船では無いので、風をうまく使うしかない。


 幸い風は追い風だったので、進めたが、逆風だったら逆に流されていたかもしれない。




 陸に沿って航海したので、ロアナの港はすぐに分かった。港に停泊すると、俺たちがまずおりて、騎士団と話をつける。

 港にはザパンニの騎士団が迎えにきていて、問題なく停泊の許可が下りた。騎士団が許可してるけどいいのかな?


 罪人に関しては現在王都から護送している最中らしく、数日待って欲しいという事だった。

 アレックスや巫女様が陸に上がり、領主の館で歓待された。食べれないものなどを聞いていたが、基本俺たちと同じ食事をするようだ。特に肉が好きとかいうわけでは無いらしい。




「この商人が奴隷狩りを行なっていた者になります。

 後の者は奴隷を購入した者です。奴隷ではありますが、愛玩奴隷と言いまして、見て楽しむための奴隷です。なので、ひどい扱いを受けた者はいないようです。

 ただ、貞操に関しては調べ切れておりません。全員が女性ですので、なかったと言うことはないと思うのですが。。。」


 騎士団が説明してくれる。女性を集めていたのは分かっているので、そういう目的で集めていたのだろう。ならなおさら貞操は危ういな。


 アレックスは怒っているし、巫女アンリ様は眉をしかめている。

 しかし、全員を自分たちで処罰できると聞いているので、抑えているようだ。

 どんな処罰になるかわからないけど、簡単には死ねそうにないね。


 驚いたのは、購入した貴族に女性がいたことだ。当主ではなく息女らしい。性的な目的でなく、本当に愛玩用だったらしい。他の貴族に見せて優越感にい浸たっていたかんじかな。


 奴隷は全員奴隷契約で縛られていたらしく、首輪をつけている者はいなかった。愛玩奴隷に首輪があったら美しくないよね。

 契約を解除するために、手続きが必要だったらしいが、今の王家に逆らう力はない。許可はすぐにおり、奴隷術の使えるものも一緒に連れてこられた。

 奴隷から解放されたことを確認してもらうために、目の前で解放するという。


 一人づつ解放していき、全部で32名に登った。

 アレックスは奴隷狩りに連れて行かれた全数を把握していないらしく、全員かどうかは確認が取れなかった。



 ザパンニの文官がアレックスに、今後の国交について打診があったが、獣人側にそのつもりはないそうだ。獣人の中で経済は回っているらしく、人間との軋轢を解消してまで国交を結ぶ理由が見当たらないとか。


 しかし、獣人の大陸の実在が証明されたので、これから獣人の大陸に船を出す商人は出てくるだろう。その時にどうするかは事前に話し合っておいたほうが良いと言うことで、国交とまではいかないが、話し合いの場を設けるくらいはしてくれるそうだ。

 それ以上はアレックスの権限では答えられないので、話し合いの場に責任者を派遣してもらうことで話がついた。



 獣人の国まで二十日くらいかかるそうで、食料と水を補充していた。奴隷の解放など、誠意を見せたので、毒などの危険はないと判断したようだ。人間の国では船には水魔法使いが乗船し、水を提供しているのだが、獣人は魔法が得意でないので、十分な量を調達できないらしい。



 聖女の訪問に関しては、国交とは別に、受け入れてくれると言う。船は大陸の南のヤードという港を指定された。一番南西にある港町らしい。アズール帝国から東に二十日。そこから大陸沿いに南に向かえばあるそうだ。


 獣人の国の通貨は驚いたことに、この大陸と一緒だった。古代帝国時代から変わってないらしい。価値もそれほど変わらず、不自由はしなさそうだ。



 俺たちは聖女の訪問を待つという巫女様の発言に、改めて、本国の同意が必要なことを伝えたが、ぜひ前向きに検討して欲しいと言われた。

 俺は行ってもいい、というか行ってみたいね。


 アレックスが現れたことにより、監禁されそうになったので逃げてきたが、獣人の村ではそれほど悪い待遇ではなかった。もちろん奴隷狩りと別枠だと判明してからのことだが。


 獣人も人間と同じように感情があり、文化を育んでいる。

 お互いの文化を尊重すれば、悪いことにはならないと思っている。最初は色々と苦労するだろうが、最終的には国交を結び、経済的にも友好的になれば良いと思う。

 獣人国にしかないものも存在するだろうしね。


 獣人の大陸には驚いたことに、一国しか無いらしい。大陸の広さは知らないが、巨大な国なんだろう。ライオン族が王族にあたり、戦闘力の高い種族が貴族に当たり、領主などを務めているとか。

 アレックスもライオン族なので、王族にあたり、末子なので、地方の領主を任せられているそうだ。獣人は子沢山だそうだ。


 俺はすでに獣人国に行くつもり満々なので、アレックスによろしくと伝えたが、変な顔をされた。俺が逃げたことを覚えてるんだろう。あの状態で逃げないほうがおかしいと思うんだが。

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