202 交渉
俺とセルジュ様は獣人の陣地に近づいていった。
獣人は近く俺たちに警戒の声をあげ、止まるように行った。
「獣人のみなさん、私は女神イシュタルの聖女をしております、セルジュと申します。代表者の方と会わせていただけませんでしょうか?」
獣人の見張りは、自分では判断できないと思ったのか、一人が奥に走っていった。
アレックスが出て来て、セルジュ様に、問いかける。
「女神イシュタルの使いと聞いた。本当か?」
「はい、今生では聖女を仰せつかっております、セルジュと申します。一度お話を聞きたいと思って来ました。
お時間をいただけないでしょうか」
「いいだろう、入ってこい。横の男は、、、先日の男じゃないか!やはり奴隷狩りの一味だったんだな!」
「お待ちください、この方は私の護衛です。決して奴隷狩りではありません。
その事も含めてお話ししたいと思っております」
「まあ、いい。話を聞こう。最後に確認するが、本当に女神イシュタルの聖女なのだな?違っていたら首を晒してくれるぞ」
「はい、大丈夫です」
俺たちは獣人の陣地に招かれた。
俺の剣は取り上げられたが、もともと魔法主体なので、それほど問題はない。ただ返してね?
「それで聖女だといっていたが、身分を証明できるものはあるか?」
「この聖印が私の身分を証明するもになります」
首元からペンダントの様なものを取り出してアレックスに渡す。
アレックスは聖印をあちこちの方向から見て、確認している。
「確かに聖印の様だ。聖女というのは巫女という事でいいのか?」
「そう呼ぶ地域もあります」
「そうか。それでは我々の国の巫女ともあってもらい、本当かどうかを確認させてもらおう。こちらに来られよ。
護衛のお前はここで待て」
「セルジュ様?」
「大丈夫です。ここでお待ちください」
セルジュ様が出ていってから2時間ほどがたった。流石に何かあったのではないかと思い始めて頃にセルジュ様が帰って来た。
アレックスともう一人女性を連れていた。
「お初にお目にかかります。私はライオン族の巫女でアンリと申します。戦神ヴェルグレラ様を信仰しております」
「ご丁寧な挨拶いたみいります。冒険者をしておりますジンと申します。今回は聖女様の護衛として参りました」
挨拶が終わったところで、セルジュ様から説明があった。
「ジン様、アンリ様とお話して、聖女だと認めていただきました。
とりあえずお話は聞いていただけるかと」
「それは良かったです」
「それでアレックス様、獣人族の奴隷に関してですが、現状、どの国でも獣人の奴隷は確認されておりません。
いるとすれば、極秘で一部の者が独占しているのでしょう。
我々も鋭意捜索しますので、戦いは回避していただけないでしょうか?」
「我々としても奴隷になったものを返してもらえればそれでいい。だが、奴隷狩りを行ったものに対しては遠慮はしない。犯人は我々の流儀で処罰したいと思う。そうでないと国民も納得できないだろうからな」
「ごもっともな意見です。とりあえず調査をさせていただいて、正式な回答をさせていただきたいと思います。
食料などの備蓄は大丈夫ですか?足りない様なら用意させますが」
「当座の食料は持参している。食料を提供してもらっても毒に警戒しなければならんから面倒が増える。それよりも調査とやらを早くしてもらいたい」
「はい。この船の形状を見るに、ここから南のヤパンニ王国という国が怪しいと感じておりますので、現在そちらに調査の部隊が向かっております。
少し前に聞いた話では3週間ほどで現地に着き、それから調査に入るそうです」
「そうか。では我々も南に移動しよう。その方が早いだろうしな」
「お待ちください。それではすぐに戦争になってしまいます。出来ればこの地でお待ちください」
「むう、聖女殿が言われるならそうしよう。だが、一月以上は待てん。それまでに結果を出してもらおう」
「承知しました。急ぐ様に伝えましょう」
俺たちは獣人の陣地をあとにし、今度は帝国の陣地へ向かった。
「交渉はいかがでしたでしょうか?獣人がイングリッド教を信仰しているかわからず、心配しておりました」
「はい。獣人の皆さんは奴隷を解放してくれれば撤退すると言ってくれています。なので、調査を早急に済ませる必要があります。期限は一月と区切られましたので、急ぐ様お伝えください」
「わかりました。すぐに鳩便を飛ばしましょう。
我々はこのまま獣人が攻めてきても大丈夫な様に警戒します」
3週間後、ザパンニ王国から連絡が入った。
ヤパンニ王国の貴族や大商人が密かに獣人を愛玩奴隷として飼っていた事が判明した。
大商人のうちの一人が奴隷狩りの首謀者で他はそこから大金を払って購入していたらしい。その商会で帳簿を調べたところ、販売先は全てヤパンニ国内だった様だ。ヤパンニ腐ってるね。
その商人も購入した貴族も逮捕され、地下牢に繋がれてるとのこと。飼われていた獣人は保護されたそうだ。証拠隠滅の危険があるので、騎士が護衛しているとのこと。
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