175 暇です


女性たちがストレスを発散した後、俺たちはイングリッド教国に向けて出発した。

俺のストレスは発散出来なかったけどね!


馬車でひたすら西に進む。国境の前後は北に魔の森が控えてて、はぐれが結構出るらしい。


俺たちの前にもゴブリンがいた。10体ほどと、体格の良さげなのが1体だ。<鑑定>するとゴブリンエリートらしい。はぐれで出てくるランクじゃないでしょうに。TPOはわきまえましょうね。


通常のゴブリンは、メアリーがサクッと<火魔法>で倒した。あれは範囲を拡大したのかな。メアリーも強くなってきたな。

エリートに対しては、クレアが飛び込んだ。数撃剣を合わせると、クレアに首をはねられていた。エリートとはいえ、ゴブリン如きそうなるよね。


魔石を回収すると、俺たちは先に進んだ。ゴブリンなんて、レベル上げにもならない。もう経験値も入ってないんじゃないだろうか?昔、スライムだけ倒してレベルMAXという偉業を成し遂げた勇者がいたらしいが、それは固定で経験値が入ったからできたことだ。

この世界では、感覚的にだが、レベル差があると経験値が入っている気がしない。


「マリア、暇ー」


「トランプでもしますか?」


「それさっきまでやってただろう?他にないか?」


「ではしりとりを」


「それももう飽きた」


クレアたちも暇らしく、ぼーっとしている。時々、ハッと顔をあげるので、うとうとしているんだろう。


「よし、目覚ましに模擬戦でもするか。体を動かせば眠気も取れるだろう」


「そうですわね。何もしないと暇ですものね」


みんな暇なのは一緒だったらしい。


リリアから返事がない。


「スースー」


寝ているようだ。この馬車の振動の中でよく寝れるね。

リリアは放っておいてもいいだろう。

馬車を脇に寄せて、木剣を取り出す。


「よし、クレアとマリアは二人でやってくれ、メアリーは俺とな」


「今日こそ一本入れてみせますわ」


俺たちは小一時間ほど体を動かした。

もちろん、一本も取らせませんでしたよ?


みんな目が覚めたらしく、そのあとはシャキッとしていた。



国境について、入国手続きを行っていると、問題が起こった。


俺のギルド証がヤパンニ王国発行な事だ。今のヤパンニの状況から、ヤパンニ王国で発行されたギルド員に逃亡兵などが紛れ込んでいる可能性が高いのだ。それを国内に入れたくないらしく、入国の許可が下りなかった。

こんなところでもヤパンニの影がちらつくのか。

ベスラートでランク上げる前に新規作成をやり直しておけばよかった。


なんとか保証金を積む事で入国を許された。おそらくあの金貨、国境警備隊で分配されるんだろうな。まあ賄賂だと思っておけばいいか。

後ろ暗いところは無いのに、こういう扱いされるって、嫌だなぁ。ヤパンニ許すまじ。



そういえば最近<ステータス>見てなかったな。暇だし見てようか。

うーん、魔力の循環は行なっているので、魔力とMPは上がっているが、他のが全く上がってない。魔力の循環ではもう魔法のレベルは上がらないんだろうか。早く回していたところに魔力密度を上げる工夫をして、一時的に上がりやすくなったが、このアイデアでは限界かもしれない。

とすると他の方法を考えないといけないが、何かあるだろうか?


やっぱり、強敵相手に魔法をバンバン使うのがいいかもしれない。


多分上級魔法を上空にはなっても経験値は入らないだろう。


この世界では、練習で100回放つよりも、敵に向かって50回放つ方がレベルが上がりやすいことが証明されている。俺は魔力を巡回させていただけなので、練習をしていたのと同じだ。

やはり、実戦か。


強い敵でも入ればな。うん?強い敵?魔の森にいるじゃん。

うん、ぜひ行かねば。イングリッド教国も北に魔の森を抱えていたはずだ。


メアリーたちには魔の森はきついだろうから、俺だけで向かおうか。


ウンウン、予定が立ってきた。



「るんるん」


「ご主人様大丈夫ですか?」


「何がだ?」


「何か機嫌が良さそうですが」


「そうか、いつも通りだぞ?」


「そ、そうですか」




「クレア、どう思いますか?」

「ご主人様のことですから、何か楽しいことでも思いついたのだろう」

「問題は何か?です」

「それは私にもわからないが、楽しそうにしてるからいいんじゃ無いか?」

「それはそうですが、危なっかしくて」

「それはご主人様に失礼だろう」

「でも、ご主人様ですよ?」

「そりゃそうだが。。。」


という話し合いが、あったとかなかったとか。

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