168 ダニエル男爵
リーダーが俺たちを認識した上で襲って来たのかは知る由もないが、気になる事ではある。
「このダンジョンに来る前に、リーダーは誰かと会ってなかったか?」
「ああ、確かに身なりの立派なやつと会っていた。顔は覚えてないが、香水をつけていたのを覚えてる」
香水か。貴族だな。
しかし、貴族が自分で足を運ぶだろうか?
信用できる部下がいないのかもしれない。
「殿下、ちょっとこちらへ」
殿下を離れたところに呼び寄せ、話をする。
「どうも、背後に貴族がいる可能性が高いと思うのですが、こいつら、生かして戻した方が良くないですか?」
「それも考えたが、まだ2日あることを考えると難しいな。せめて1日ならなんとかなるんだが」
「騎士を呼んできては?」
「それほどの価値があると思うか?」
「いえ、リーダーなら価値があったとは思うのですが」
「そうだな、リーダーだけなら連れて帰ってもよかったな」
「まあ、どうするかは任せますが、、、『成人の儀』はいつから決まっていたのでしょうか?」
「聞きたい事はわかるが、予定は一年前から決まっていて、殆どの貴族が知っているから範囲は絞り込めん」
「そうですか。まあ今回の仕事は関係ないので、これ以上は聞きませんが」
騎士団長は聞くことを聞き終えたのか、全員の胸を貫いて殺していた。苦しませないのも優しさかね?
「殿下、賊の尋問を終わりました。賊は全員殺しました」
「ご苦労。詳細はダンジョンを出てから聞く。賊をひん剥いて、何か証拠がないか調べてくれ。そのあと、小休止をとって、ダンジョンを出よう。帰りは野営せずに一気に出てしまうぞ。こいつらが帰ってこないのを不審に思って、別の冒険者を差し向けられると面倒だ」
やはり、誰かの指図だと思っている様だ。この街に貴族が来ていたら噂になると思うんだけどね。
ダンジョンからは特に問題なく戻れた。リリア達とも合流し、帰りに賊にあったことを話すと、心配された。大した敵でもなかったので、問題ないと伝えると、安心してくれた様だ。
クレアとマリアにこの街に貴族かその使いが来てないか、聞き込みを頼んだ。
この街には法衣貴族のダニエル男爵が来ているそうだ。なんでも一月くらい前から来ているらしい。賊が来た頃と一致しているのは気のせいだろう。これで犯人がその男爵だったら、お粗末以外何者でもない。
王族の暗殺は国家反逆罪ですよ?一族郎党縛り首ですよ?
殿下がおれの部屋に来て、その男爵に会いに行くという。護衛期間中なので、一緒に行きますけどね。本来なら依頼外ですよ?
その男爵の泊まっているのはなんと、同じ宿だ。道理で俺たちが出発した日時を把握しているわけだ。まあ、その男爵が黒幕だったらの話だけど。
「ダニエル男爵、お話よろしいか?」
「で、殿下、ご無事で!」
「ふむ、なぜ襲われたことを知っているのかな?」
「い、いえ、そのダンジョンは危険ですので、、、」
「まあ、そう言う事にしておこうか。
それで襲いかかって来た賊を尋問したところ、貴殿の名前が挙がったのだが、どう言うことかな?」
「そんな!名前は名乗ってないはず!
あ、いえ、その様なものは知りません」
いや、バレバレだよ?それで誤魔化してるつもりなんだろうか?
「それで、なぜ私を狙った?」
「い、いえ、私が殿下を狙うだなんて!そんな事は!」
「もう証拠は上がっている。答えろ」
「殿下がいなければ、わしの娘は幸せな結婚が出来たはずなんだ!」
よく話を聞いてみると、男爵には一人娘がいるらしい。その婿を探していたら、なんと、娘には好きな男性がいるのだとか。
平民の男だが、漢気のある性格で、大変好ましかったそうだ。それで結婚を許可する事にしたのだが、男に伝える前に、殿下の側室の話が舞い込んだらしい。貴族として殿下に気に入られたのなら、とその男との結婚を断り、側室に入る日を待ってたと言う。
しかし、殿下の側室の話がなくなり、改めて男と婿の話をしようと思ったら、なんと男は自害していたらしい。娘も男の自害に泣き叫び、翌日には娘も自害したとか。
「なるほど、それで私を殺そうと。今の話からすると、男爵には一族もいないんだな?」
「はい、私の家系は代々法衣貴族の家系で、王都で慎ましく暮らしておりました。私の妻も先立たれて久しく。娘だけが私の生きがいでした。
そんな娘の将来を奪ったのです!あなたも命で贖うべきだ!」
よくある事?だよね。候補に上がっただけで自害するなんて、ちょっと諦めるの早くない?
「なんにせよ、王族の殺害は未遂であっても一族郎党縛り首だ。お前の妻の実家とかに迷惑がかからないといいな?」
妻の実家まで範囲に入るんだ。こえーよ。
「そんな!妻の実家は関係ない!」
そう思ってたんだろうね。
「騎士団長、連れて行け。王都に連行する。自害しない様に注意しろ」
「ジン殿、つまらないものをお見せしました」
自分の知らないところでドラマが進んでいたのって、どう言う気持ちなんだろうね。
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