158 帰還
俺は岩山の上で目を覚ました。
どうやら北の山脈のどこかのようだ。これほどの山脈、他にはないはずだし。
俺はステータスに問題がないか、確認する。
するとほとんどの項目は問題ないのだが、運が999に上がっている。レベルが上がった時も上がらなかったのに、なぜだろう?やっぱり神様とあったせいかな。運の上げ方なんて分からなかったからいいんだけどね。運のステータスって何に影響するんだろうね。ステータスで一番分からない使い道の項目だよ。
とりあえず、遺跡に戻るか。
魔法陣の部屋をイメージして<転移>を行おうとするが、実行できない。魔法陣に何かあったか?
しかし、今だと<転移>できる場所はロービスの家くらいだ。それだと合流するまでに2ヶ月はかかる。その間、4人は大丈夫だろうか?俺がいないからといって、羽伸ばしてたら泣いちゃうよ?
取り合えず、合流するためにも、一度遺跡に向かおう。一番手堅い。
俺は北に向かった。街道にぶち当たったら東に向かえばいいだろう。
夜は風の結界で魔物の侵入に対処し、多少睡眠不足になりながらも街道に到着した。
街道を東に向かうと馬車とすれ違った。ちょっと止まってもらった、現在位置を確認する。
どうやらこのまま進むとヤルムという街に着くようだ。以前遺跡に向かう時にも立ち寄った街だ。
一晩休むと、再度遺跡に向かって歩き出した。途中で北に折れ、五日ほどで遺跡についた。
しかし、遺跡には誰もいない。テントを張っていた跡もなく、ここを引き払ってから久しいのが見受けられた。俺がここに来るまでの一月の間に引き払ったのだろうか?
まあ、確かに急に消えたし、捜索を諦めて帝都あたりに戻っていてもおかしくない。
仕方なく、ロービスの家に戻ることにした。帝都には転移ポイントがないんだよね。
ロービスの家の倉庫に<転移>すると、上の方から音が聞こえる。
ん?鍵閉めたよな?
俺は倉庫のドアを開き、誰がいるのか確認すると、マリアが調理場に立っていた。
あれ?
「マリア、いつ帰ってきたんだ?」
「ご主人様!」
マリアが泣いて抱きついてきた。
「どうしたんだ、マリア。何かあったのか?」
「えっくえっく」
マリアが泣き止まない。
「マリア、どうし、、、」
「ご主人様!」
「ど、どうしたクレア」
「メアリー様、リリア様、ご主人様が戻られた!」
バタバタと足音が近づいてきて、皆が調理場に入ってきた。
「ジン様!ご無事でしたのね!」
リリアも涙ぐんでいる。どうなってるのか、誰か説明してほしい。
「メアリー、どうなってる?俺がいない間に何があった?」
一人涙していないメアリーに状況を確認する。
「あなたが遺跡で消えてから一年が経ってますわ。私たちは遺跡の周辺を捜索したあと、ジン様が<転移>でどこかに行ったのだろうと目星をつけ、<転移>のポイントがあるここに戻ってきましたの。
ここなら、何かあった時にポイントを使うかと思って。
正解だったみたいですね。どこに行ってたんですの?」
「ああ、ちょっと魔法陣の起動に失敗してな。北の山脈に飛ばされてた。まさか1年も経ってるとは思わなかったな」
どうやら、世界の狭間とやらにいる間に1年が経っていたようだ。<時空魔法>の失敗だ。時間がずれてても仕方ない。むしろ1年で済んで良かったと思わないと。これで100年経ってたとかになったら、知り合いから作り直さないといけなくなる。
それにしても、俺がいなくなっても仲良く4人で生活しているとは。メアリーあたりは諦めて他の婚約者を探すかと思ってたのだが。。。
「リリアもマリアも泣き止め。ほら、可愛い顔が台無しだぞ」
俺はハンカチを渡してやる。
二人は鼻をかみながらも泣き止まない。仕方ない。しばらく待つか。。。
「申し訳ありません、取り乱してしまいました」
マリアが謝ってくるが、それはどうでもいい。
「わ、私もすいませんでした」
リリアももういい。
「それで、俺がいない間に何かあったのか?」
「はい、父上、陛下から召喚状が届きました。ジン様の生存確認ですわ。
遺跡での事を正直に伝えると、しばらく待っても戻ってこないようなら、死んだものとして扱う、となりましたわ。
そして、半年前に陛下は、ジン様はお亡くなりになったとして、冒険者ギルドなどに通告しました。それに伴い、ジン様の冒険者資格が喪失しました。
マリアやクレアの奴隷契約が解除されてないから、生きてると主張したんですが、連絡が取れないなら意味がないと聞き入れてもらえず。
申し訳ありません。私の力不足ですわ」
「つまり、俺は死んだことになってるのか?」
「そういう事ですわね」
「ふむ、それはそれで良いな。よし、ギルドカードも更新せずにこのまま旅に出るぞ。前の予定通りにヤパンニ王国からだ。馬車はまだ残っているか?」
「はい、いつでも使えます」
マリアが管理してくれていたようだ。
「ギルドカードを更新しない理由は何でしょうか?」
「俺が生きてると分かったら、周りがまたうるさくなるだろう。俺が死んでるなら周りも何も言わない。ほら、更新しないほうが望ましいだろう?」
「それだと私が取り残されてしまいますわ。父上が何を言おうと頑張って、ここに残りましたのに。せめて旅には連れて行ってくださいな」
「まあ、もともと旅に連れて行く予定だったからな。構わないぞ」
「じゃあ、俺が戻ってきたとバレる前に旅に出るぞ。明日は皆で買い物だ。あ、俺は家に残るぞ?流石に買い物に出たらバレるからな」
「お任せください。ヤパンニ王国まで3週間と少し、ご主人様に快適な旅をお約束します!」
マリアがスイッチ入ってるようだ。別に快適な旅にこだわりはないよ?どうせ馬車は揺れるのだ。食事が美味しければ十分だ。
「ヤパンニ王国は荒れてるだろうから、撤退しても大丈夫なように、十分に食料を仕入れておいてくれ」
「かしこまりました」
さあ、旅の再開だ。
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