138 指輪?


リリアとメアリーの卒業式の日が来た。もちろん、マリアもだ。


「、、、という事で私たちは学んできたわけですが、、、

、、、、、、という事もあり、、、

、、、、、、したわけです。しかし、、、

、、、今後も学院の卒業生として恥じない生き方をしていきたいと思っております。

以上をもって、卒業の挨拶とさせていただきます」


メアリー、話が長い。

校長の話よりも長かったぞ。


俺は今回もドゴール伯爵の代わりに卒業式に参列している。

ドゴール伯爵はハーゲンの後始末で忙しいらしい。なんせ、金庫番を任せていた部下が娘を殺そうとしていたんだからな。何が目的だったのかは知らないが、影響は小さくないだろう。

他の部下も疑ってかかる必要があるし。


それよりも、ようやく旅に出れる。


とりあえず、準備は終わってる。ただ、リリアは一度オーユゴック領に戻って、ドゴール伯爵に挨拶の必要があるとの事。まあ当然か。なら、オーユゴック経由、温泉行きといった感じかな。



オーユゴック領まで7日、途中の森でゴブリンが数匹出たものの、問題はない。

ロービスの領主邸(城)に入っていく。



「お帰りなさいませ、お嬢様」


「ご苦労様です、お父様はいらっしゃるかしら?」


「はい。執務室でお仕事をされていらっしゃいます。すでに連絡を入れてありますので、部屋でお待ちください」


俺たちは客室に案内された。

入ると、まずリビングがあり、奥に2つ扉があった。片方が寝室でもう片方が風呂らしい。

クレアとマリアも部屋を割り当てられている。

メアリーはもっと豪華な部屋を割り当てられているそうな。


俺は前の宿屋風の部屋の方が好きだけどね。広いと落ち着かない。今回もメアリーと同じくらい豪華な部屋を割り当てられそうになったのを、断ったのだ。壊したらと思うとゆっくりできないからね。


伯爵ではなく、奥様から呼び出しがあった。

何だろうか?


「ジン様、お久しぶりです。

今日はリリアの事で話したいことがあり、お時間をいただきました」


リリアとの事?何かあったっけ?


「ジン様、リリアと契りを結ばれたとか。間違いありませんか?」


「はい。ちなみに誰から聞いたか聞いてもよろしいですか?」


「リリア本人です。手紙で知らせてくれました。それは嬉しそうに。結婚運びデート?でしたか。面白いことを考えられるのですね。前代未聞でしょうね。もしかしたら流行るかもしれませんよ?」


「どんどんやってもらいましょう。その時は俺が見物に行きたいですね。あの時の周りの視線が痛かった事といったら。まあ、自分のせいなので仕方がありませんが」


「それでです。リリアを正式に娶ってやってもらえませんか?

派手なプロポーズをして、承諾したのに、結婚しないというのは外聞が悪いのです。

別に伯爵家としては無視できる範囲ですが、母親として、はっきりとしてやって欲しいので。

もともと、学院を卒業しても結婚の意思があれば、結婚するという話でしたしね」


なるほど。確かに約束したな。


「ドゴール様は何かおっしゃってますか?」


「主人は特に何もいってはおりませんが、同じ気持ちだと思います」


「そうですか。私の方は結婚に反対ではありませんが、派手な結婚式とかは困ります。

身内だけの慎ましやかなのが望ましいです。

私は平民なんです。婿入りならともかく、嫁を取る立場ですから」


「なるほど、確かにそうですね。それで構いません。家族と主な使用人で式をあげましょう。

ただ、結婚式用のドレスを注文したいと思っているのですが、一月はかかるでしょう。なので、旅をその分遅らせていただけないかと思いまして」


「一月くらいなら問題ありません。もともと急ぐ旅ではありませんし」


「ありがとうございます」


「それで念の為確認ですが、リリア様との式にメアリー殿下が参加されることはないですよね?新婦の登場時に二人いたら、俺は逃げ出しますよ?」


「え、ええ。そんなことはないはずです。、、、はずです」


メアリーから打診があったな、これは。まだ諦めてないのか。事前に釘をさせて良かった。

二人で登場したら、俺は逃げるよ?牽制じゃなくて本気だからね?




さて、結婚するとなると、俺も準備が必要だ。新郎の燕尾服は注文すればいいが、指輪を用意しないと。

給料3ヶ月分というけど、俺、働いてないから、給料は、、、あ、リリアから月に金貨1枚もらってたわ。なら金貨3枚分の指輪か。300万円が高いか安いかは意見が分かれるな。平民としては高いし、貴族としては安いだろう。


その前に。


「クレア、マリア、結婚の時に贈るものといえば?」


「やはり、アクセサリーだろうな」


「ええ、ブローチやネックレスなどもいいかもしれません」


やはりそうなるか。

俺は元の世界を基準に指輪を選択したが、指輪はペアリング、つまり、互いに着けておくものだ。

しかし、この世界は一夫多妻制なのだ。

左手の薬指は一本しかないのだ。複数と結婚した場合に困る。

なので、指輪ではなく、アクセサリーを贈り、女性だけが着けるのだ。ペアで着けるという概念はない。


確認しておいて良かった。指輪して剣なんて握れないしね。


俺はアクセサリー屋に向かった。

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