136 閑話 酒は飲んでも飲まれるな
「クレアー、普段何してるんだー?」
「え?知らなかったのか?他の兵士たちと訓練したり、見回りしたり、だな」
「そうかー。毎日同じことして、飽きないかー?」
「毎日が充実してるぞ?」
「そうかー。充実してるのかー」
「ご主人様、もしかして酔っ払っているのでは?」
「うん?ちょっと飲んだかな?」
「いやいや、いつものご主人様じゃないぞ?」
「まあ、それは良いじゃん。クレア、しりとりしよーぜー」
「ご主人様、大丈夫か?」
「しりとりの『り』、りす!『す』だよ!」
「おーい!誰か!」
「はい、なんでしょうか?」
「ああ、ルナさんか。ご主人様が酔っ払っているようでな」
「まあ、珍しい。お酒を飲まれるなんて。それもこんなになるまで」
「おー、ルナー。しりとりしよーぜー」
「かなり飲まれているようですね。おや、これは『カベルネ・ソーヴィニヨン』の十年ものじゃないですか。産地はイングリッド教国ですか。なかなか良いもの飲んでますね」
「いや、そうじゃなくて、ご主人様をどうにかしないと」
「ジン様も飲みたいときくらいあるでしょう。ここは優しい目で見て差し上げるべきでは?」
「や、優しい目か。こ、こんな感じか?」
「いえ、そういう意味ではないのですが。。。」
「ルーナー、リスの『す』!」
「では、スイカで。『か』ですよ」
「カバン。『ん』だよー」
「ジン様弱いですね」
「『ん』だってばー」
「はいはい。お酒はこの辺にしておきましょうね。お嬢様に怒られますよ?」
「リリアかー。よし、リリアも呼べー。一緒に飲むぞー。ガッハッハっは」
「ジン様がこんなに飲まれるとは、何かあったのでしょうか?」
「ご主人様はこんなに酒に弱かったのか?」
「んー、忘れてたー、リリアここにイター」
ベッドにはリリアが寝ている。顔が真っ赤なので、酒を飲んでたのだろう。
「おや、リリア様も一緒に飲まれてたんですね。それで飲み過ぎたと。ふむ、これはこのままでいいのではないでしょうか?」
「いや、ダメだろう。ご主人様をこのままにしてはおけない」
「仕方がありませんね、<水魔法>の使い手でも呼んで解毒してもらいましょうか?今屋敷に誰かいたかしら?
ちょっと確認してきますね」
「おー、リリアー、ここにいたのかー、のむぞー」
「ご主人様、リリア様はすでにダウンしてるぞ?」
「んー、これくらいでなしゃけない、リリアーまだのめるだろー」
「クレアさん、<水魔法>の使い手を連れてきました。早速解毒してもらいましょう」
使用人の一人が俺に解毒の魔法をかける。
俺は酔いが覚めた。
「。。。」
「。。。」
沈黙が痛い。あのまま寝てれば忘れたかもしれないが、解毒で回復した俺ははっきりと覚えてる。
「あなたはご苦労様でした。もう戻っていいですよ。」
「はい、失礼します」
ルナは通常営業だ。
「ルナ。俺は何かしたか?」
「ジン様、覚えてらっしゃるでしょう?」
「いや、その、なんだ。オボエテナイカナー、なんて」
「流石に無理があるかと」
「いや、別に普段からこんなに飲むわけじゃないんだよ?たまたまリリアに勧められて。美味しくってつい」
「もちろん、そうでしょうとも。クレアさん、あとは任せますね。私は仕事に戻ります」
「いや、ルナさん、任せられても、、、」
「では、失礼します」
ルナは自然に出て行った。
「。。。」
「。。。」
「あー、クレア。今日はだなー」
「ご主人様、私は何も見てない」
「いや、だからな」
「何も見てない。失礼する」
クレアも出て行ってしまった。
はあ、こんなことなら飲むんじゃなかった。
リリアが美味しいワインが手に入ったからとつい飲み過ぎてしまった。
あんな醜態を晒して、どう接しろと?
翌朝、リリアは昨晩のことを知らずに、普通に挨拶をしてきた。
俺も挨拶を返すが、クレアとどうしよう。
「ご主人様、おはようございます」
「ああ、おはよう。昨日は、、、」
「私はまだ仕事がありました。失礼する」
クレアもどうすればいいのか分からないらしい。
「ジン様、何かありましたの?」
「いや、なんでもない」
俺は何もなかったことにした。
幸いルナも何も言ってこなかった。
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