082 リリア様おめでとう


俺は、毎朝恒例の訓練をしていた。


<身体強化>を使わずに、剣を振る。右へ左へ上から下へ。

敵がいるものと仮定して、攻撃を加える。その際、剣スジがぶれるようでは話にならない。

足も使い、想像上の敵の周りを回り込む。

膝を柔軟に使うのも重要だ。


ひたすら剣を振り続ける。

疲れが溜まってきた頃に終了する。疲れを推して訓練しても身につかない。もちろん、剣を始めたばかりであれば、疲れた状態でも剣が振れるように、限界まで訓練するのだが、基本を収めた上で技術を高めるなら、疲れて剣先が鈍ってから訓練しても逆に害になる。


裏庭の隅では、ルナがタオルと果実水の用意をしてくれているはずだ。


「ジン様、お疲れ様です。タオルをどうぞ」


俺は受け取って、顔を拭く。

果実水を飲んで、一息つく。


「ルナ、風呂は入れるか?」


「準備してありますので、すぐに入れます」


「うん、じゃぁ入ってくるから、着替えを出しておいてくれ」


「かしこまりました」




俺は風呂に入りながら、考える。


昨日、俺はお姫様だっこで街中歩き回り、俺が婚約者だとアピールして回った。

それをリリア様は正式なプロポーズと取り、夜中に部屋まで来て、抱いてくれと言った。

しかし、俺はそれを拒否し、学院を卒業まで清くいましょうと諭した。


そのまま契りを結んでしまえば、リリア様も満足し、良好な関係になっていただろう。

しかし、俺は童貞という事もあり、手を出せなかった。


そのせいで、リリア様は前よりも拗らせている。


俺はどうすべきだろうか。



「クレア、どうすればいいと思う?」


「今更ですが、拗らせてしまったものはどうしようもありません。

ですが、今からでも抱いて差し上げれば良いかと思います」



「マリア、どうすればいいと思う?」


「とりあえず、謝るのはどうでしょうか?

恥をかかせて申し訳ないと。

その上で、改めて契りを結べば良いかと思います」



二人とも、リリア様を抱くのを推奨と。



「ルナ、どうすればいいと思う?」


「ジン様、それに関しては使用人の私からは申し上げられません」



むう、他に相談できるのといえば、、、




「ドゴール様、どうすれば良いと思いますか?」


「それをよりにもよって、わしに聞くか?

親として言えば、結婚するまで清い関係でいてほしい。

だが、男として言えば、抱いてしまえ。

わしからは、これ位しか言えん」




「ドーシー様はどう思われますか?」


「そんなの簡単よ、甘い言葉を囁いて、抱いてしまえば良いのよ。

昨日、あんな真似をしておいて、抱かない方がどうかしているのよ。

今からでも行って、抱いてきなさい」



どうも、誰に聞いても、抱いてやれ、との意見だ。

昨日のデートはよっぽどまずかったのだろうか。



はぁ、俺が覚悟を決めるしかないのか。



その日の夜、俺はリリア様の部屋の前にいた。

ノックをすると返事があったので、部屋に入った。


「な、ジン様、こんな夜に女性の部屋に来るなんて。

ジン様らしくないですわ」


俺はリリア様の手を取って、そのまま引っ張り、抱き寄せた。


「じ、ジン様?」


俺はリリア様の顎に手を当てて、上を向かせる。

口づけをした。


リリア様は真っ赤になりながらも、受け入れてくれた。


俺は左手をそのまま背中に回し、首のあたりから続いている、ドレスのチャックを下ろした。


リリア様は動揺しているが、俺は口づけを離さない。


そして、リリア様が動揺している間に、ドレスを脱がせてしまった。


リリア様も俺が何を望んでいるのかを、察し、俺に抱きついてきた。


俺はリリア様をベッドに押し倒した。





翌朝、眼が覚めると、リリア様は俺の左手を抱きしめるようにしながら寝ていた。


「リリア様、リリア様、朝ですよ?」


「じ、ジン様なぜ私の、、、そうでした、私たち結ばれたんでしたね。昨日のジン様は素敵でした」


「体に変なところはありませんか?」


「まだ、ジン様が中にいらっしゃるような感じで、変な感じですわ」


「そ、そうですか。

では、歩けますか?そろそろ食事の時間ですが」


「ちょっと、ぎこちなくなりますが、歩けると思います」


その歩き方を見ると、少し足を開いた、がに股気味の歩きになっていた。

見る人が見ればすぐにわかるだろう。


ベッドにも初めての証が残っているのだし。


朝食のテーブルに着くと、ケーキが出された。


「お嬢様、おめでとうございます。

これで名実ともに夫婦ですね」


「「「パチパチパチパチ」」」


バレバレだったらしい。


ちょっと恥ずかしいが、これだけ祝福されるのは嬉しい。

リリア様が、真っ赤になったまま、魂を抜かれているが。。。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る