031


俺は、西の草原で<火魔法>の練習を、、、していなかった。

いや、正確にはしていたのだが、案外簡単に行ったので、<火魔法><土魔法><水魔法><光魔法>と加減を覚えた。

しかし、<闇魔法><神聖魔法>は効果がはっきりしないので、魔力の消費が減らせてるのだけを確認してやめている。


今練習しているのは、<時空魔法>だ。

初期の頃に<アイテムボックス>は習得したのだが、<転移>がうまくいかないのだ。

ラノベではお約束の交通手段だが、イメージが湧かない。

<時空魔法>の魔力は使えるし、加減もちゃんとできる。

目の前数メートルを目標にしているので、目的地のイメージの問題でもない。

純粋に<時空魔法>の魔力をどう変換したらいいのかが分からないのだ。


転移魔法自体は、数十年前にいた賢者が使えたらしい。

なので、魔法が存在しないことはないはずだ。

この世界、ジョブというシステムがないので、賢者の独自スキルという可能性もない。


せめて一度でも経験すればわかると思うのだが。。。




<転移>の練習をして1週間が経過した。

<転移>は相変わらず使えてない。


しかし、今日は家の引き渡しの日だ。


朝から3人でギルドに向かい、キャシーさんの時間が空くのを待つ。


「お待たせしました。

家に案内しますね」


俺たちは先日も来た家に向かった。


「こちらがカギになります。

中は清掃済みのはずですが、確認いただけますか?」


俺たちは中に入って、各部屋を見て回る。

俺が見る限りでは、綺麗に清掃されている。


「マリア、どうだ?」


「はい、ちゃんと清掃されています。

キャシー様、ベッドとソファーは買い換えようと思うのですが、引き取りは可能ですか?

それとも購入した店での引き取りとなりますか?」


「そうですね、引き取るとしたら、有料になるでしょう。

購入した店で、引き取りを前提に購入するのが良いと思います」


「わかりました。


ご主人様、必要なものを検討しますので、しばらくお待ちいただけますか?

クレアさんも手伝ってください」


「わかった。

ただ、俺のものだけじゃなく、お前たちの分も買うんだぞ?」


「、、、はい」


やっぱり俺の分だけを考えていたらしい。

多分、自分たちのベッドも埃だらけのまま使うつもりだったのだろう。


「キャシーさん、確認しました。

他に手続きは残っていますか?」


「いえ、これで完了です。

それでは私は仕事に戻りますので、失礼します」


キャシーさんを見送ると、マリアたちが戻ってきた。


「大体のものはリストアップしました。

これから買い物に向かってもよろしいでしょうか?」


「もちろんだ。行こう」


俺たちは職人街に向かった。


ベッドが3つにソファーが2つ、食器や敷き布など、多岐にわたる。

あちこちの職人を訪れて買い物を続けた。

正直俺は、商人街で、まとめて決めてしまっても良かったのだが、マリアが言うには、商人の利益分だけ損するとの事だ。

せっかく職人街が近くにあるのだから、そちらで買ったほうが、いろんなものが買えるので良いそうだ。


俺は途中で疲れてしまったので、お金だけ渡して、屋台の果実水を飲んで待っていた。

俺には良し悪しなんてわからん。

まぁ、大きい方のマジックバッグ渡してあるし、大丈夫だろう。


昼を過ぎても待ち合わせ場所に来ない。

俺は屋台で串肉を食べながら待っていたが、遅すぎる。


結局、夕方近くになって、二人が戻ってきた。


「遅かったな。心配したぞ」


「申し訳ありません、いろんな種類のがあって、なかなか決められなかったので」


「まぁ、無事だったのならいい。

買ったものはマジックバッグの中か?」


「はい。大きいのは便利ですね。職人の方も驚いていました」


「金は足りたか?」


「はい、こちらが残りになります」


マリアが袋を返してきた。

金貨を10枚ほど渡してあったのだが、半分くらいしか使わなかったらしい。

商人から購入したら倍ほどかかるらしいので、職人から直接買うのは随分と安かったようだ。



それから俺たちは家に戻り、購入したものを各部屋に設置していった。

俺の部屋のベッドはなんとキングサイズだった。

確かにそのくらいのベッドは入るが、大きいと気後れする。いかん、貧乏性が発現している。


他にも俺の部屋には小さめのソファーや大きめのクローゼットなどが追加された。

他の部屋もベッドやソファーを置いた。

キッチンには食器などが置かれ、サービスワゴンなども置かれた。

食器は何人分かと思うほど買い込んでいた。


風呂にはタオルや石鹸などが置かれ、スポンジなども買ってきたようだ。


「お湯をためる桶はないのか?」


「あ、申し訳ありません、忘れてました。

すぐに買ってきます」


ちょっとしたポカもあったが、生活するのに問題ない程度には整ったようだ。

宿は今朝で引き払っているので、今日から住めるのはありがたい。


「それで、お前たちの服も買ったんだろうな?」


「え、私たちのですか?

普段きているのがありますが?」


「そうじゃない、家着だ。

今持っている服じゃ、家の中で寛げないだろう。

家の中でブーツを履いてたら、足の疲れも取れないしな。

スリッパなども必要だろう」


「申し訳ありません、そこまで考えが及びませんでした。

今日はもう店がやってませんので、明日でよろしいでしょうか?」


「あぁ、それでいい。

明日はお前たちの分を買いに行こう」


翌日、服を購入する際に、マリアが勿体無いと言うのが恒例のようにあった。

ちなみに、マリア用にメイド服を買うときは、お仕えするのに必要です、と言って落ち着いたデザインのものを選んでいた。

可愛いからいいんだけどね。




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