猫です、猫です、猫ですなのです。

大三元

第1話 少し変わったいつもと変わらない日常


 猫です、名前は色々ありますがここでは一番呼ばれているトラと名乗ろう。


 私は生まれて4年目の男です、毛の色は焦げ茶と黒のトラ模様で所謂雉猫って奴だ。


 日がな一日ゴロゴロしてお腹が空けば人間が置いてった食べ物を食べ近所をふらつきボスが居ればへーこらしてやり過ごす日々を送ってます。


 今日もお気に入りの木の枝で昼寝してゴロゴロと過ごしていたんだが起きてみると知らない街に居た。


 私は猫なのでどう伝えればいいのか解らないが知らない街なのだ、人間の住処も雰囲気が違うしそこいらを飛んでいる小鳥も見た事が無い奴だ。


 まぁ人間は居るようだし何とかなるだろう、そう思って私は街を探索することにした。



―――――――



 うむ、やはりここは知らない街だ、馴染みの商店街は何故か露店街になっていたり道行く人間も何かおかしい、多分服と呼んでる物が違うのだろう。


 あと金属とかいう物で服を作って被っている奴もいる、腰には金属の棒、前居た街では見た事のない種類の人間だ。


 これだけ変わっても私の扱いは変わらなかった、子供には追いかけられるし老人からは食べ物がもらえる、若い女にはべたべたと触られるし男には見向きもされない。


 ご飯も食べたし寝るかと考えて近くに見えた木に昇ろうとした時第一街猫と遭遇、見た目は変わる前の街に居た奴と同じだ、とりあえず挨拶してみよう。


「どうも初めまして」


「あぁどうも初めまして、あんたここいらでは見かけない顔だねぇ、新顔かい」


 うむ、前と変わらず話は通じるぞ、なら話を合わせて上手く切り抜けよう。


「そうなんですよ、まだここに来たばっかりでね右も左も解らない新参者です」


「そうかいそうかい、なら今日の夜に集会があるからね顔を出しておくれよ、時間になったら迎えに行くからさ。

っであんたいつも何処に居るんだい?」


「いやぁお恥ずかしながら本当に来たばかりでしてまだ寝床を探している最中なんです」


 うんうん、こういう奴は地域に数匹は居るんだよな、なら後は身を任せれば―――


「そうかいそりゃぁ大変だ、付いてきなさいな、仮の寝床ぐらいなら教えてあげるよ」


 後は付いて行くだけ、やはりコミュニケーションはとるものだ。


 しかしこの御仁どうもおかしい、匂いを嗅げば男か女かぐらいわかる筈だし目の前に居るから見ればわかる筈、なのにどっちか見当がつかない。


 まぁそう言う奴なんだろう、あんまり気にしても駄目だな。


「さぁこの塀の向こうに茂みがある、そこなら安心して寝れるだろう」


 数分歩いた先にそこそこ大きな人間の住処があった、遠くにある出入口は人間の出入りが激しいので何かあるのだろう。


「ありがとうございます、では私はのんびりやらせてもらいます」


「あぁ、じゃあまた夜に」


 そう言ってピョイと塀に昇り何処かへ行ってしまった、あの御仁には感謝だな。


 しかしこの人間の住処は面白いな、遠くで忙しなく動く人間は何か解らない獲物を運んでいる。


 大きなトカゲやら見た事が無い種類の犬によくわからない魚みたいな者を運んでいる、ピクリとも動かない獲物を見るにこの寝床では取ってきた食料をためる所と見た。


 食事には困らなそうだ、しかしこうも人間が多いとやはり落ち着かないな、だから仮の寝床なのだろうか。


 そんな事を考えてきたら眠くなってきた、夜までまだあるだろうし寝るかぁ―――



―――――――



「―――あん ―――あんた起きなよ、時間だよ」


 あぁ、気持ちよかった、やはり睡眠は大事だな。


 まぁ呼ばれてるし付いて行くか。


「どうも、ここは中々いいですね」


「最初はそうだろうねぇ、しかしいつまでもここに居るといつか人間に追い払われちまうよ」


「そうでしょうねあれだけ人間が居るのですから」


 移動しながら話していると目の前に人間が居ないそこそこ広い場所が見えた、他の猫達も集まっているようだ。


「じゃああんたはここね」


 そう言われた場所に座る、他の猫達もいろんなところで座ってたり寝そべってたりしている。


 うむ、隣の奴は若い男だな、反対側はおばあちゃんだ、分かるぞ、しかしあの御仁は何故解らないのだろう。


 この街の猫達も前居たとこの奴らと同じで集まってもたまに顔を見るだけで何もしない、ただ集まっているだけだ。


 のんびりとした空気が流れている、そんな時人間らしき足音が背後から聞こえた、振り返ってみるとなんと大きな猫が二足歩行で歩いて来ている。


 その大きな猫は人間の服を着ているしなんだが変な感じだ。


「やぁ諸君元気かな?」


 大きな猫が皆に話しかける、すると皆はにゃぁと返事をした、私もにゃぁと返事をしておこう。


「おや、新顔君だねぇどうもよろしく。

ここら辺の猫を取り仕切ってる者だ」


 そういうと大きな猫は私の隣に座った、うむ解るぞ、こいつは女だ。


 それから数刻して一匹、また一匹とこの場から離れていく、そろそろ集会は終わりだな。


 なんというか今回のボスはデカいだけの女だった、前居た場所みたいにコワイ男じゃなくて良かった。


 そう思いながら私は元居た寝床へ帰る事にした。



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