身長が高めの瀬高さんの背中

 それは職場の最寄り駅。

 電車から降り改札を抜けるとその子はいた。

 175cmの僕が見上げるくらいの背丈がある女子高生は改札横の柱を背にしてスマホをいじっていた。

 この子のことは背が高いから瀬高さんとでも呼ぼう。


 瀬高さんは必要以上に縮こまっているように見えた。

 といっても改札を抜ける波に呑まれている僕にはほんの数秒しか視界に入らなかったがそういう印象を受けた。


 しかし僕は1月の今日初めて瀬高さんを見た。4月なら分かるがそこまで目立つ彼女を今まで見つけられなかったのは何故なのか考える。


 ①引っ越してきた

 高校生らしいので転校はそうそうないと思うが地区内での引っ越しで電車通学になったのかもしれない。でなければあの高身長を見逃すわけがない。


 ②伸びた

 急成長したのかもしれない。成長期はよく伸びる。10-20cmくらいすく伸びる。


 ③僕の目を掻い潜ってきた

 4月からだとして200日ほどの通勤。その全てを今まで掻い潜ってきた猛者だったのだ。つまり忍者、くノ一。


 といったことを考えながら仕事を終え、帰宅しようとすると帰りにも瀬高さんを見つけた。

 駅のホームで目の前に立つ彼女を今度はまじまじと見つめる。

 見上げる背丈。長い髪。スマホをいじりながら俯く顔。

 容姿端麗という僕が出来る最大の表現を使い彼女を褒めておく。


 それで瀬高さんだが、やはり少し縮こまって見えた。少しでも自分を小さく見せるようなその雰囲気に僕は少しの愛らしさを感じた。自分の身長を恥じるその姿が愛らしい。小さい物が可愛いという空虚な持論に頼った考えだがそれが寧ろ愛らしい。


 といってもそれはただの妄想であり、本当は寒いから縮こまっているだけかもしれない。でも想像するのは自由だ。世の中に溢れている疑問とも思えない疑問を膨らまして想像する。瀬高さんの背中を見ながら、そうフカス僕であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る