面白くても評価されない作品と、面白くないのに評価される作品


 みなさんは、錬金術師ってご存じですか?


 錬金術師は鉄や銅から金を作り出すなどの挑戦を続けた人たちであり、その人たちは現在では滅んで科学者へと名前を変えました。


 さて、なんで錬金術師が滅んだのかというと、錬金術師たちの研究が、根本から間違っていたからです。


 遥か昔、元素が見つかっていない時代です。

 彼らは物質が何であるか、という問いを抱いておりました。

 例えば、金と鉄は何が違うために違う物質として存在しているのか?

 その理由として、熱や水分量など、その物質が生まれる過程によって物質が変化するのではないか? という仮説を立てていました。

 この仮説が正しいのであれば、新しい加工方法さえ見つけることができれば、鉄を高価な金に変えることが可能ということになります。


 その方法を探して日夜研究を行っていたのが錬金術師という訳ですね。


 しかし、現代の人間なら皆が知っているでしょうが、鉄と金というのはそもそも元素が異なるために、いかなる加工方法をもってしても鉄を金に変えることなど不可能であったのです。元素が発見されるにあたり、錬金術師の夢は絶たれたのでありました。


 めでたしめでたし……。

 って、めでたくねぇよ?


 そう、めでたくないのです。


 なんでこんな話をしたのかというと、これと似たようなことが私にも起こったからなのです。


 さて、本題に入るのですが、私は大きな勘違いをしておりました。


 その勘違いとは、私が面白い話を書けば、それで評価されてプロになれるだろう、と考えていたことです。


 いや、上記の言葉は正しい側面ももちろん存在します。

 だからこそ、私は上記の言葉が正しいと仮定することで不思議な悩みを抱えていたのです。


 その悩みとはずばり【なぜ、私の面白い作品は評価がされないのか?】という事です。


 私は私の中では、自分の物語を面白いと思っておりました。

 長編もいくつか書きましたし、公募にも送っていることはすでに話しているのですが、その結果がよろしくない。


 具体的に言いましょう。

 私は私の書いた作品の中で、電撃小説大賞の二次選考を通った『視えるヒトが視るモノは』よりも、一次選考で落選した『コネクトシステム』や『魔法少女始めました』や『異世界で俺は神になる』の方が面白いと感じていたのです。


 これっていうのは、上記の言葉が正しいのだとすれば、凄く不思議なことです。


 現実問題として起きたこの疑問を解決する理由として、ここから私が考えてしまったのは……自分は、自分の感性が、普通の人とは違っているのではないか? という絶望的な思い込みでした。


 自分の感性がおかしい。

 自分で思う面白さが世間一般にとっては間違っているのかも知れない。私の面白いというのは、他の人にとって面白くないのかも知れない。これらの不安から生まれたのが『宇宙人を好きな女子高生が~~』という作品です。

 自分の武器だと思っていた戦闘シーンや、命懸けの想いなどを捨て、まったく新たな面白さに向かう必要があると考えてしまったんですよね。


 で、この悩みなんですが――結果的に、私は錬金術師でした。


 そもそも、【面白い】と【評価】は別ベクトルの考え方だったのです!


 例えば『鬼滅の刃』という作品が、今の日本では最も【評価】されている作品です。

 しかし、『鬼滅の刃』が今の日本で最も【面白い】作品でしょうか?

 答えはnoでしょう。

 鬼滅が面白いとされる一方で、面白さが理解できない、という人も多いのです。


 さて、この新たな仮説が正しいのだとすれば、私の作品が【面白い】にも関わらず【評価】されないという矛盾を孕んだ結果が、矛盾でなくなるのです。


【面白く】ても、【評価されない】ことは有り得ることだったのです!


 これって、とても大事なことだと思います。

 正直、これを見つけられなくて筆を折る人もいるぐらいにはヤバい問題なんじゃないかなって、思います。


 ……私はこんな単純な勘違いに、一年以上本気で悩みました。

 でも、一年で気づけて幸運だったのかも知れません大汗


 仮説が間違っていれば、そこから生まれる答えも間違うのは必然だと思います。

 物凄く悩んで、それでも答えが出ない場合は、そもそもの問題定義が間違っている可能性があるので……ひとまわり大きな視点を持つことも大切かも知れないですね汗


 私が目指すべきなのは【面白く】て、なおかつ【評価】される作品だったのかなぁと、今更ながらに思うのでした。


 めでたしめでたし?

 めでたいのかなぁ?汗


   ***


 みなさん、久しぶりの更新でしたが――執筆活動は順調でしょうか?

 私はこの新たに得た仮説を元に、【評価】される要素とは何か?っていうのを考察し始めました。

 具体的に言うと、『鬼滅の刃』とか『ワンピース』を考察してやろうって感じです。

 ここまでくると、このエッセイの題名である〝面白い物語を書くために〟とは毛色が変わってきてしまうので、どうしようかなぁって気もしないでもないですね汗


 続ければ続けるだけ悩みの尽きない趣味ではありますが、お互い頑張ってまいりましょう!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る