王女と首席たちの最後の一年間 MSCO―王立精神力戦闘士官学院―
紬木楓奏
プロローグ
この白い部屋に入って、どのくらいたっただろう。
身体に貼り付けられた、たくさんのコード。その先の機械。白衣の大人たち。唯一ある窓の奥には、難しそうな顔をする父上と、兄さん。
「何故、安定しないのか……器用なものだ」
「これだけの精神力を完璧に発動させたら、我々には敵なしですね。父上」
「感想より妙案を出せ」
ああ、またなにか実験をされるのか。
人は誰しも、強弱関係なく精神力を持っている。それを具現化することに成功したのは、うんと昔の話。今では、ライフラインは勿論、軍隊が扱う兵器も持ち主の精神力を利用している。元から持っているものなのだから、人間にも環境にも優しい、とっておきの資源だ。
「早く覚醒させないといけない。この星を覆うバリアの修復には、眞(ま)冬(ふゆ)の力が必要だ。時間がない」
「では、MSCOに入学させたらどうでしょう」
王立精神力戦闘士官学院――Mental Strength Combat Officer academy。通称MSCOは、精神力戦闘のエキスパートを育成するための機関。倍率数十倍を誇り、若者なら一度は憧れる専門学校である。
「きっと扱い方を掴めていないのですよ。ずばぬけた精神力を持つとはいえ、王宮でぬくぬくと育った箱入りですからね」
「学院性たちと机を並べて学ばせるのか。レベルが違うぞ」
「だからこそ、です。人に揉まれ刺激を得れば、きっと何かが変わります」
「妙案だが、含みがあるな」
「まさか。可愛い妹のことを想っての発言です」
「分かった」
もう、すべて――忘れたい。
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