2日目
小指に起こされてしまった。
どうやら時計が半周するほど眠ってしまったらしい。パネルには機械から出てもいいという主旨の言葉が並んでいた。
私は鉛筆と共に外へ出るべく扉を勢いよく開ける。
窓の外は暗闇だった。
恒星が近くにないようで、全く星が見えない。どこか懐かしい感覚に襲われる。
これはそう、友人と海に出た時のことだ。
無謀なことに私達は夜の、月明かりすらない海に出たのだ。
私達は高波に気づけず、私一人がさらわれてしまった。
天も地もわからない。
闇雲に泳いで、水面がわからなくて、ただ酸素だけが消費される。
最後の息を吐き出した時、雲が慈悲のように月を表してくれた。
意識を取り戻した時、友人の顔が随分と近かった。喉のずっと奥に違和感を感じて、咳込む。
友人は顔を避け、心配そうにこちらを覗いていた。その目からは美しい涙がとめどなく流れていた。
小指は相変わらず口が達者だ。鉛筆に何度も絡みに行くが、その度に振られて帰ってくる。
どうしようもない奴だ、と笑みがこぼれる。
窓の外の暗闇は、この船を食い物としか見ていないようだ。あのときの海と同じく。
月が恋しくなってしまった。
私は紙と鉛筆をとり、全身全霊をかけて月を描いた。
『2日目、特に変化なし』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます