お嬢様とのキス

「わたし、あなたのことが好きですわ」

「ありがと!」

 にこーとお互いに微笑み合う。

 彼女とはいつもこうだった。

「さっ、お弁当食べよ!」

「はい」

 彼女のお手製のお弁当を昼休み、二人っきりで中庭のベンチで食べる。

 これもいつものこと。

 うちの学校は私立で、小学校から大学までのエスカレータ式。

 彼女とは小学2年生の時に知り合って、もう8年の付き合いになる。

 うちの学校でもトップを競うほどの資産家のお嬢様で、成績も優秀で、美人。

 そんな彼女と友達なのが、あたしの自慢。

「うん! 今日もお弁当、美味しいよ」

「ありがとうございます。あなたにそう言っていただけるのが、一番嬉しいですわ」

 中学に入ると、彼女がお弁当を作ってきてくれるようになった。

 なのでありがたく、頂いています。

「でもさ、毎朝大変じゃない?」

「そんなことございませんわ。あなたに喜んでいただけることを考えて作っているので、とても楽しいんですの」

「そお?」

 ちなみにお茶も彼女特製。美味しい♪

 でも…ふと考える。

 彼女はモてるし、いずれはあたしのこの場所も、どこかの男の子に取られてしまう。

 そう考えると…ちょっとさみしい。

「ねっねぇ」

「はい? 何でしょう?」

「その…あたしが邪魔になったら、いつでも言ってね!」

「えっ?」

 あたしはさみしさを隠して、明るく振る舞った。

「ホラ、キミはモてるでしょう? いつか彼氏が出来たら、遠慮無く言ってね! あたしはちゃんと引くからさ」

 明るく言ったつもりだったけど…彼女の表情が暗くなる。

「それは…ありませんわ」

 あっ、許婚とかいるのかな?

「ごっゴメンね。何かあたし、空回っちゃったかな?」

「いえ、そうではなく…」

 彼女は頬に手を当て、少し首を傾げた。

 ううっ…。可愛いなぁ。絵になるよ~。

「…わたしがあなた以外を選ぶことなんて、ありえないという意味ですわ」

「………はい?」

「ですから、殿方なんて選びません。わたしはあなたが好きだと、以前から言っていますでしょう?」

 ほっ本気だったの!?

 てっきり社交辞令かとばかりっ…!

 それとも天然?

「すっ好きって、そおいう好き?」

「はい、恋愛感情の好きですわ。ずっとあなたが好きでしたの。気付きませんでした?」

 満開の花のような笑みで言われても…。

「でっでもどのぐらいの好きなの?」

 高鳴る胸を押さえつつ、聞いてみた。

 …本当は期待していたのかもしれない。

 彼女はにっこり笑って、あたしの頬に触れて…優しくキスした。

 甘くて、柔らかくて、あたたかな彼女の唇。

 頭の中がぽやっとする。

「…ご確認できて?」

「できました。しっかり」

 顔が真っ赤になっていることだろう。

 彼女は微笑みながら、あたしの顔を優しく手で包んだ。

「今度のお休みに、わたしの家に来てくださいな」

「良いケド…遊ぶの?」

「いえ、ご紹介したいんです。両親に、あなたのことを」

 ………それって、もしかしなくても………。

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