長い、雨の日が続いている。

 雨ばかりの空を見ていると、気分がなんだか陰鬱になった。


「薺。またラブレター。もらったんだ」呆れた声で千里が言った。

「うん。……まあ」薺は言う。

 薺の下駄箱の中には、手紙が一通入っていた。真っ白な封筒に『白瀬薺さんへ』の手書きの文字が書かれている。

「薺は本当に昔っからずっともてるね。いいな。羨ましい」と千里は言う。

「そんなことないよ。私、別にそんなにもてないよ」薺は言う。

 でも、それは薺のいつもの嘘だった。


 白瀬薺は異性にとても人気があった。

 背が高くて、モデル体型で、痩せていて、色白で、髪が黒く美しくて、白い足が長くて綺麗で、顔も整った顔をしていて、おまけに胸もそれなりに大きかった。

 だから、薺は小学校のころから(そのときは女の子のくせに背が大きいとか、変にからかわれることが多かったのだけど)ずっともてた。

 中学校のときもたくさんの人に、(同じ中学校の生徒たちからだけではなくて、他校の男子生徒からも告白をされた。薺はこの田舎の街の男子生徒たちから、あいつ知っている? 北中の白瀬薺。すっごく綺麗だよな、とか言われて、噂になったりしていたようだった。薺はそれはすごく嫌だった)告白をされた。

 それは現在、高校二年生になった今もだいたい同じ状況だった。


 親友の千里はそんな薺のことがよくわかっているので、なんにも言わずに「私も誰かに告白とかされないかな?」と雨降りの空を見上げながら、にっこりと笑ってそう言った。 

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