雪女の娘さん

青切

雪女(1)

 夏は嫌。

 冗談ではなく、溶けてしまいそうになるから。

 高校に行くのが本当にゆううつ。


 私の通っている高校には、制服もなければ、服装を規定する校則もない。

 それぞれ着たい服で登校する。


 私の場合は、真っ白い肌を日焼けから守るため、黒っぽい服をよく選ぶ。

 今日は黒いワンピースに、ターコイズブルーのチョーカー。


 誰からも強制されているわけではないのだけれど、うちの生徒は、グリーン系統のアイテムを何かしら身につけている者が多い。


 私もそれに倣って、入学祝いにママからもらったチョーカーをよく身につけている。


 ママの命令で伸ばしている髪を早く切りたい。


 重いし、暑いし。


   〇


 夏季休暇前の期末試験が近づくと、講義の出席率が高くなる。

 人が多いと講義室の温度が上がるので嫌。


 うちの学校は、必要最低限のことしか授業で扱わない代わりに、それが身についていないと容赦なく留年させられる。


 クラスというものがないので年上の同級生はいないが、去年まで先輩と呼んでいた同学年生は何人かいる。


 期末試験に落ちたり、出席日数が足りなくて受けさせられる補講も怖い。


 夏季休暇が潰れるだけでなく、人件費を含めた費用が生徒持ち。


 頭数で割るので、補講を受ける生徒が少ないと悲惨。


 八月の教室など、エアコンをガンガンに利かせても耐えられない。


 考えるだけで呼吸が浅くなる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る