第21話 ロザリオ

一同が柏木に目を向ける。


「どの攻略組ですか?ヒリアスとは連絡が取れますか!?」


セルシスは自分のいたパーティーがどうなったのか気になっているようだった。


「ヒリアス、ですか。残念ながら現在は消息が不明です。セルシスさんはヒリアスのメンバーのセルシスさんだったんですね。劫火の廊下でお手伝いさせいただいたの、僕です。それで、現在把握しているパーティーはロザリオ、モルフェスの2パーティーです」


「ロザリオ!?トップパーティーじゃない!」


セルシスさんが興奮気味に話している。どうやら攻略組のトップパーティーらしい。リーダーのロザリオは鍵を1つ攻略しており、レベル120とこの世界でトップランカーとのことだ。

早速ロザリオに連絡が取れるか確認しようとしたが、レッドプレーヤーがこの世界に来ていること自体、異質なことなのでロザリオが不振に思ってしまうかも知れない。雫は慎重に行きましょう、と提案し皆同意していた。


「なに?柏木くん。4つ目の鍵の場所でも分かったの?」


「あ、ロザリオさん。今日はその件じゃなくて、レッドプレーヤーの皆さんがこちらに来てるんです。それで、ロザリオさんに会いたいって」


ちんちくりんがロザリオと話している。しかもレッドプレーヤーってハッキリ言ってる。


「ああ、それ?把握してるわよ。さっきUGWからアクセスあったし。よく分からなから応答しなかったけど。それで?レッドプレーヤーの皆さんが私たちになんの用かしら?」


「ロザリオさん?私は雫。UGWのブルーマスター。一緒に協力してseven keys worldを攻略したいのだけれど、どうかしら?こちらの提供出来る戦力はUGWからの支援。私と同じゲームマスター3人が支援するわ」


「ふむ……。UGWからの支援、か。悪くないわね。このseven keys worldは、どうやらこの世界だけじゃ攻略出来ないみたいなのよ。あなた達の支援があれば、それも分かるかも知れないわ。その申し出、お受けいたしましょう」


ゲームマスター3人?2人じゃないのか?ガルも人数に含めているのか?


「それじゃ雫さん、早速だけれどこっちに来てくれるかしら?私のポートナンバーはこれ。コネクティングポートの認証設定をお願いするわ。他のメンバーも同様にお願いね」


そういわれて、各面々は設定を行う。


「準備は良いですか?転送します!」


柏木がそういって攻略コンソールを操作すると俺たちは転移して深い森の中にいた。


「全員いるか?」


周囲を確認するとシュガーだけ居ない。


「初めまして。私はロザリオ。佐藤くんは接続ハブになって貰ってるから向こうに残ってるわ。心配しないで大丈夫よ。それで?雫さんはどちらかしら?」


「私です。初めましてロザリオさん。早速で悪いのだけれど、現在、このseven keys worldの攻略の糸口はあるかしら?」


「それを話す前に、現状を説明するわね。現在、獲得している鍵は3つ。私たちが1つ、モルフェスが1つ、ヒリアスが1つ。それでヒリアスが現在行方不明。あと4つの鍵はどこにあるのか分かっていないわ。モルフェスと相談したんだけど、この世界にはなくて、UGWにあるんじゃないか?って思ってる。雫さん、なにか手掛かりになりそうなものはあるかしら?」


「ごめんなさい。いまのところ思いつかないわ。でも4つ……4つのなにか……」


アリーシュとディオールにも柏木くん経由で確認したけども、手掛かりになりそうな情報は無かった。


「なぁ、雫。イヤだとは思うけどガルにも聞いてみないか?何か分かるかも知れない」


雫は渋ったが最終的には了承した。俺はウィルに状況を報告してガルに繋いで欲しいと伝えた。


「4つか。思い当たるのは支配の塔だな。あそこのバルコニー、7色に分かれてるだろ。ディオールにでも調べに行って貰えばいい」


そうだったか?確かにあのバルコニーは色分けされていたが。でもそれ以外はなにも無かったと思うが。ディオールからの報告を待つしかなさそうだ。

それにしてもガルはなぜこんなに協力的なのだろうか。あの一件からしてこちらに敵対心を抱いていると思っていたのだが。ましてやヘルエスさんとジェシカさんを、あんなにあっさりと葬ったんだ。流石にここまでくると何かあるのではないかと疑心暗鬼になる。


「あの、ロザリオさん、ヒリアスが行方不明って言ってましたけど、氷結エリアまでは私も同行していたので間違いなくそこにはいたと思うのですが……」


「あそこね。この前、探索した場所なんだけど、誰も居なかったわよ。あ、でも……開けられない石扉ならあったわね。あの中に入っているのかも知れないわね。開けられなかったけど」


この世界のトップランカーで開くことの出来ない扉。開けることなんて出来るのだろうか。しかし、現状この世界での唯一の手がかりだ。行って再確認する価値はある。


「あの、ロザリオさん、その石扉はここから遠いのでしょうか?」


聞いてみると、俺たちは深い森の中から一変して激しい吹雪の中にいた。


「この扉よ。って、なに寒がってるのよ。ウォール使えないの?」


「ウォール??ローライン!」


ローラインがウォールスキルを発動すると吹雪は形成されたドーム状の障壁で遮られて凍死を免れた。


「あら。驚いた。全体効果のウォールが使えるのねあなた。すごいじゃない」


他になにが使えるのか聞かれてブレーカー、リフレクト、リカバリーと伝えるとロザリオは満足そうに「ブレーカーをこの扉に使ってみて」と言ってきた。

ローラインがブレーカーを扉にかけてみたが、開かない。試しに自分のスコーチングヒートで殴ってみたが開かない。というかびくともしない。


「やっぱりダメかぁ。ブレーカー使える人がいればなんとかなると思ったんだけどなぁ」


ロザリオさんは残念そうに天を仰ぐ。そのとき前に歩み出た雫が扉に手を当てると石扉は軽く開いてゆく。


「やっぱり。封印のスキルが使われてた」


雫はこちらでもスキルが使えるのなら自分の封印のスキルも使えるのではないか、と思ったらしい。ロザリオさんに確認すると、UGWでスキル、と呼んでるものはOPWではウィッチクラフト、魔術と呼ばれているとのことだ。さっき、森からこの吹雪の中に移動したのも、転移魔術を使ったとのことだった。ただし、この魔術は、特定のクエストをクリアして初めて会得するものらしい。ちなみに自分のスコーチングヒートのような暴力的な魔術は見たことがない、とのことだった。


「それじゃ、扉も開いたことだし、中を探索開始するわよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る