星降る夜の天引き

らなっそ

開幕

第1話 空港

 午後2時の織奥空港。久々の青空が一面ガラス張りの窓から見える。




 基本的には国内線しか利用しないが、というか利用できないが、たまには国際線の雰囲気を味わいたく、ふらっと国際線のロビーをぶらつく。こちらの方が内装やらサービスやら気合いが入っているのは明白だ。まさにVIP待遇ってやつだな、そして優雅な気分に僕を浸してくれる……


 あまり関係無い話だが、シンガポール発、織奥着の便が運航見合わせらしい。




 そんなことより大事なのは秋良が乗る福岡発、織奥着の便が遅れていることだ。約6時間程遅れているようで、原因は不思議なことにまだ分かっていない。


 日本列島はただ今、春真っ盛りであるが、今日は特に全国的に穏やかな天気らしい。どこかで春の嵐が吹き荒れることなく、まったく平和な天気であった。


 点検ミスだろうか?あまり飛行機の遅延には詳しくない。なにかしらパイロットにミスがあったか……はたまたハイジャックか……?


 搭乗員よ、情報をくれ。


 かれこれ3時間位この空港にいるのだが、暇で仕方ない。


 もういっそのこと秋良をほっといて、帰ろうか。


 この情報社会、電話でメールでも何でも連絡はつくのだから、あいつもちゃんと僕の家にたどり着けるだろう。




 静かに僕は国際線のターミナルに戻り、再び電光掲示板を確認して出口へ向かった。


 情報を前もって確認していなかった僕も悪い、が、あいつが選んだ便も悪い。




 出口の方を見ると面倒なことに人集りができていた。少し待っていれば落ち着くと思っていたが、時間が経てば経つほどひどくなり、人の流れが生まれていた。




 やや、突入するしかないか。


 覚悟を決めて人の流れに入っていく、流されないように。




 人と人の間を通りながら、ふと、2階の通路が目についた。青く澄んだ空がガラス越しに見えると同時に、


 一人、変なものがいた。


 宇宙人のような、銀色に輝く物体がそこを通過したのが見えた。




 もう僕は出口に着いていた。


 帰りの電車に揺られながら僕はあの物体の姿を思い出そうとしていた。


 銀色の……長い髪だったかもしれない…女性のようにしなやかな体つきだった……人……だったよな……




 でも……頭に何か変なものがあった気がするのだ。あれは触覚か?




 家に着いた頃には4時になっていた。


 相変わらずの部屋の汚さにうんざりする。


 あの空港の綺麗さとは大違いだ。


 まぁ、居心地はいいのだが。




 フォンフォンフォン……


 何だ?この音




 ……自分の携帯電話の音だ。


 この前ブォンブォンブォン……から変えたんだった、忘れていた。


 やっと秋良の飛行機が着いたのか。まったく、予定よりも早く着いたんだな。


 ……違う


 ディスプレイには見知らぬ電話番号が映されていた。


 またあの宗教の勧誘か?困ったな〜


 そろそろ電話番号覚えそうだ。


 と色々考えながらしばらく鳴り続く携帯電話を放置していた。




 しまった、何も宗教の勧誘と決まった訳じゃないのに!


 ふと我に返って電話に出た。




「もしもし?」


「……」




 間違い電話かな...




「もしもし、比嘉ですが」


「ジーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」


「うわっ!!」




 なんだ!?この音は!?


 セミの鳴き声というよりは、ラジオから流れるようなノイズに近い。


 まさか、これは……!!




「あなた……もしかして……!」




 プツッ……ツーツーツー……


 電話は切れてしまった。


 これは……














 宇宙人だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る