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 信くんはその背中にリュックのようなものを背負っていた。(信くんはそのリュックのことを万が一のためと二人に説明していた)そのリュックの中には長くて太いロープと、懐中電灯が入っていた。(それは非常用リュックのようで、他にも水や乾パン、衣料品なども入っているようだった)

「信くん。最初から、トンネルの中に入っていくつもりだったんだ」その道具たちを見て、久美子が言った。

「ああ。そうしないと、このトンネルの正体がわからないからな」にっこりと笑って信くんは言う。


「如月くん。このトンネルの中に入るのはやめたほうがいい。絶対になにかよくないことが起こる気がする」さゆりちゃんはさっきからずっと心配そう中をして信くんのことを引き止めようとしている。


「大丈夫だよ。関谷。そんなに心配するなよ。ロープも懐中電灯もなるし、危ないと思ったらすぐに引き返してくるよ。それとも、なに? このトンネルの中に入るとそのまま、『俺が行方不明』にでもなってしまうとか、関谷。お前思っているのかよ?」

「……それは、わからない」信くんの言葉にさゆりちゃんはいう。

「でも、絶対になにかよくないことが起こるような気がするの」さゆりちゃんはそう言ってから久美子のことをちらっと見た。その目には哀願のようなものが漂っている。きっとさゆりちゃんは久美子にこう言いたいのだと思った。お願い久美子ちゃん。久美子ちゃんも如月くんを止めて、と。

「三島お前はどう思う? 俺はトンネルの中に入ったほうがいいと思うか? それともやめたほうがいいと思う?」

 さゆりちゃんに続いて信くんが久美子を見る。そして信くんは久美子にそう言った。


 久美子は悩んだ。

 ……きっと、信くんはここで私が止めたとしても、きっとどこかのタイミングで、(一人でも)トンネルの中に入っていくと久美子は思っていた。(信くんとはそう言った性格の、よく言えばすごく勇気を持った男の子なのだ)なら、このとき、三人が揃っているときに、信くんにトンネルに入ってもらったほうが、私とさゆりちゃんで信くんをサポートしてあげることができるのではないかと思ったのだ。(そっちのほうが一人でトンネルに入るよりはずっと安全だと思った)

 でも、さゆりちゃんの泣きそうな顔を見ているとそんなことは言っていられなくなった。

「私も反対」そう言って久美子は手を上げて発言をした。


「……そうか。三島も反対か。(……二人とも反対か)……なら、仕方ないかな」信くんは名残惜しそうな目をしてトンネルの暗い闇を見つめながらそう言った。

「そう。やめたほうがいいよ」さゆりちゃんが新くんの服を引っ張ってそう言った。

 さゆりちゃんがそう言ったときだった。

 灰色の空から、ずっと泣くことを我慢をしていた子供のように、ぽつぽつと小さな雨が三人のいる元から雨に濡れていた深い緑色の森の中に降ってきた。


「……時間切れだな。よし、帰ろう」

 信くんは雨の降り出した空を見て、それからさゆりちゃんと久美子の顔を見てそう言った。

「うん。わかった」

 さゆりちゃんと久美子は、声を揃えて信くんに向かってそう言った。

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