空の旅

勝利だギューちゃん

第1話


「悟、お買い物行ってきて」

母さんの呼ぶ声がした。


仕方なく下に降りる。


「何?母さん、買い物って」

「近所のスーパーで、野菜と肉買ってきて」

面倒くさい。


「そんなの、マイルかニオに頼めよ」


マイルと言うのは、サンタクロース。

時間にルーズで、クリスマスを過ぎた元旦にやってきた。


ニオと言うのは、節分の鬼。

こちらも時間にルーズで、1月6日にやってきた。


で、ふたりはペンフレンドで、すぐに意気投合し、

今は、うちで居候している。


「ふたりともお出かけよ」

「じゃあ、・・・」

「修学旅行よ・・・」

妹の事だが、先手を打たれた・・・


仕方なく、行くことにした。


「困ったな」

あっ、マイル。

無視して通り過ぎよう。


「どうしようかしら」

無視して通り過ぎる。


「もう、悟くん、気付いてよ」

「どうした?マイル」

「実は、ニオを喧嘩して・・・」

「原因は?もしかして時間の食い違い?」


ニオはせっかち、マイルはのんびり屋。

待ち合わせなら、食い違いが起きても不思議ではない。


「まさか。お互いの事はわかってるよ」

「じゃあ、場所の間違い?スマホで電話してみれば?」

「知ってて訊いてない?」

そういえば、ニオはアナログ派で、スマホは持っていなかったな。


「実は・・・ね」

「実は?」


「私たち、野球を見に行こうとなったの」

「興味あったけ?おふたりさん」

「最近ね。で私は横浜スタジアムに行きたかったの?」

「ベイスターズファンだっけ?」

「うん。スターマン、かわいいね」

星繋がりか・・・


「でね、ニオは甲子園に行きたいんだって」

「トラつながりで、タイガースファン?」

「うんん」

単純な・・・


「それで、喧嘩になって・・・」

しょーもなー


「ねえ、どうしたらいい?」

僕は頭をかいた。


「なら、他のチームの試合に行けば」

マイルは、悩んでいた。


10分ほどかかった。


「それもそうね。どこがいいと思う?」

「間をとって、ドラゴンズにすればいいのでは?」

「さすが、悟くん、冴えてる」

感心されるほどではないが・・・


「じぁあ、すぐに追いかけるね。ありがとう」

マイルは僕にハグをして、走って行った。


たく・・・


「悟くん」

この声はニオ。


「マイル知らない?さっき喧嘩したんだけど・・・」

「ああ、マイルならさっきまで、ここで話してたよ」

「で、どこいったの?」

「君を追いかけて行った」

「どうしよう?入れ違いになった」

ニオは、悩んでいる。


しゃーないな・・・


僕は自分のスマホを取りだして、電話をした。


「もしもし、マイル?悟だけど、ニオが戻ってきたよ。

うん、うん、了解」


ニオは、落ち込んでいる(そぶりをしている)


「ニオ」

「何?」

「マイル、すぐに来るって」

「本当?」


20分後、マイルは戻ってきた。


「ニオ」

「マイル」


ふたりは、抱きあって、再会を喜んでいた。


何か話をしているようだが・・・


「じゃあ、僕はこれで・・・」


「待てい」

2人に腕を掴まれる。


「悟くんは、どこのファンだっけ?」

「ファイターズ」

「じゃあ、行こうか、北海道」

冗談だろ?


「ううん、本気」

「お金ない」

「お金の心配はないよ」

マイルが言う。


「おいで、ルドルフ」

一頭のトナカイが、ソリをひいて下りてきた。


「マイル・・・まさか」

「そのまさか。さあ、ふたりとものって」

「さあ、悟くん」

ニオに手を差し出される。


相手が人間なら逆だろうが、人間じゃないからいいだろう。

ある意味神様みたいなものだから、甘えよう。


それを掴むと・・・


「ふたりとも、シートベルトしてね」


こうして、北海道まで、空の旅をすることになった。

僕は心の中で悔いた。


「正直に、ライオンズと言えばよかったよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

空の旅 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る