人生に絶望した少年がなんとか世界を救う
雨宮r
プロローグ ~人生最悪のあの日~そして彼はケディと出会った
ここは高校の屋上。一人の少年がそこに立っていた。
彼の名前は
しかし九月は絶望していた。彼女を失ったのだ。亡くなったのではない。
黒い仮面をつけた男に連れ去られてしまったのだ。それも彼の目の前で。
彼は必死に抵抗した。戦った。だが、全く歯が立たなかった。彼は自分の非力さに絶望した。
それでも彼の心はまだ折れてはいなかった。彼女は死んだわけではなかったからだ。
九月は彼女を捜すために行動を起こすことにした。しかし、そこで異常が発生する。
誰も彼女の事を覚えていなかったのだ。九月自身も彼女の名前を忘れている。
彼は人生にも絶望した。人生に絶望した人間が学校の屋上にいる。
そんな危険な状態からこの物語は始まる。
「あぁ…名前まで忘れてしまった。誰も彼女のことは覚えていないし。」
九月の心を支えていたのも彼女だった。
「彼女は本当にいたのだろうか?俺の妄想だったんじゃ…」
「そんなことはないわよ」
突然一人の少女が現れた。
「彼女は実在していたし、今も生きている。それは事実よ。」
そうその少女は言った。
「君は誰なんだい?」
「私?私はケディ。
そう少女は名乗った。
「どうしてあなたが、あなただけが彼女の存在を覚えているのか教えてあげるわ。狗井坂信蔵君。」
「??」
ケディは今、九月の事を
「狗井坂家っていうのはね、もともと魔王を討つためにできた家系なんだ。『救世十二支』っていうんだけどね。他のメンバーは家系なんて関係ないんだけど狗井坂家だけは別でね。『信蔵』の名前を継いだ次期当主はメンバーとして活動することになっているのよ。だからね君は救世十二支の主力メンバーなのよ。」
「???」
それは九月にとって初めて聞いたことばかりだった。
「2015年に魔王が世界を滅ぼすことを宣言してから約300年間、私たちは、私は魔王と戦い続けているわ。けれども魔王軍の活発な動きは見られなかった。」
(私?)
「だけど最近になってようやく魔王軍が活動を始めた。これは危険なことではあるけどようやく魔王軍のしっぽがつかめるということでもあるのよ。私たち『救世十二支』は襲撃を仕掛けたわ。ただ……」
「ただ?」
「魔王軍の力は私たちの想像以上だった。完成された十二支でない私たちには太刀打ちできず返り討ちにされてしまったわ。」
(完成された?)
完成されたという言うのは全員がそろったことを指すのではない。十二支に選ばれた犬の強さによって決まる。
「そのせいで、私以外の十二支メンバーは全員再起不能にされてしまったのよ」
ちなみに、ケディが再起不能にされていなかったのは彼女が強いからではないのだがその話はまあおいておこう。
「それで新しい十二支のメンバーを捜しているのよ。そして最初に見つけたのがあなただったってわけ。」
そう言うわけがあったのかと九月は思った。だがしかし、九月が最初に見つかったのは偶然ではない。ケディの能力の一つに狗井坂を見つけることができるというものがある。ケディはその能力を使ったのだ。だから九月は知らないが彼は正真正銘
「びっくりしたわよ。いきなり死のうとしてるんだもの。それで君が知りたがっていた周りの人たちがみんな彼女のことを忘れている理由と君は覚えている理由を説明させてもらうわね。」
そう九月はそれが一番知りたかったのだ。九月は背筋を伸ばし唾を飲み込んだ。
「魔王軍が人を連れ去るのは存在のエネルギーを奪うためよ。たぶん彼女も存在のエネルギーを奪われて存在していたという事実を忘れ去られてしまっているのね。」
「それで俺が憶えているのは?」
「それは簡単な話。あなたが狗井坂だからよ。狗井坂と狗井坂に選ばれた救世十二支たちは魔王とそな配下の能力の影響を受けにくくなっているからよ。」
「えっと。じゃぁあいつが、俺の彼女が連れ去られたのは魔王の仕業ってことか?」
「えっと・・・少し違うくて・・・・・・魔王の配下にね、六魔将ってのがいてね。今世界で行われている魔王軍の行いは全てそいつらが仕切っているわ。」
「いや、そうじゃなくて魔王を倒せばあいつも戻ってくるってことだよな?じゃあ話は簡単だ。俺は戦う。あんたについていけばそれも叶うんだろ。死んでなんていられねー」
(驚いた。さっきまで絶望の淵みたいだったのに。よほどその彼女ってのが大事なのね)
「うん。まあそう言うことになるわね。それとさっき自己紹介したでしょ私には風見ケディって名前がちゃんとあるんだからケディって呼んでもらえないかしら。私もシンって呼ぶから。」
ケディは唇を尖らせながらそう言った。
「シンっ!!!」
その呼び方は彼女が九月のことを呼ぶ時の呼び方だった。
「えっと…ダメかな?」
九月は気が付いていた。自分が彼女からシンと呼ばれていたということを忘れていたということ。また、ケディが彼女と瓜二つだということに今の今まで気が付けないほど彼女のことを忘れかけていたということを。
だから九月はうなずいた。もう二度と彼女を忘れないために。
「ありがとう。じゃぁ私たちのアジトに来てもらおうか。」
そう言ってケディは歩き出した。
「どこに行くんだよ。」
そう九月が聞くとケディは空を指さした。
「そこ。」
そう。空には巨大な建物が浮かんでいた。
そうそう自己紹介を忘れていました。私はこの話のナレーションを務めさせていただく
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