MIDAS TOUCH

名古屋ゆりあ

プロローグ

広い寝室には、熱がこもっている。


先ほどまで“そう言うこと”をしていたと言うことである。


大人2人が横になってもまだ広いクイーンサイズのベッドのうえで、私は荒い呼吸を繰り返していた。


冷たいシーツが熱くなった肌に心地いい。


「――かわいい」


それまで私を見下ろしていた彼はフッと口元をゆるめて笑ったかと思ったら、精悍なその顔を近づけてきた。


「――ッ、んっ…」


肉づきがいいその唇の感触に、熱がまたぶり返してきているのがわかった。


「――やっ、待って…」


「ダメ、待てない」


彼の唇が首筋に触れた瞬間、躰が震えた。


それが私の唇と重なっていたんだと思ったら、心臓がドキッ…と鳴った。


「明日も仕事…」


「まだ愛しあいたい」


そう言った私をさえぎるように、彼は自分の唇を私の唇と重ねた。


「――んっ、ふっ…」


できることならば、私も彼と愛しあいたい。


朝なんかこなければいいのにと、彼と夜を過ごすたびに何度思ったことだろう?


いつまでも、彼と一緒にいる訳にはいかない。


いつかは…そう、いつかは彼と離れないといけない日がくる。


「――好きだよ…ずっと、愛してる…」


彼の唇が額に触れたその瞬間、私は目を閉じた。

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