第3話・永久の魔王
「うん、美味しい。はい、どうぞ陛下───陛下?あれ?お腹が空いてないんですか?美味しいですよ?……困ったなぁ」
(たぶん血だ、人間の血だ、たぶんそうだ…)
正直な所リリオネル、腹は減っていた、音が鳴るほどには。しかし目の前に出された物の正体に気を取られて飲む所ではない、魔王として生きていくのなら、例えコレが人間の血だとしても通らなければならない道なのだから。目の前で困ったまま固まっているルシアノをチラッと見ると、彼の表情がフワッと柔らかく綻んだ。再び哺乳瓶を口元に持っていくルシアノ、覚悟を決めて飲み口をハムハムと噛んで吸いながら真っ赤な液体を胃に流し込んでいくリリオネル。
(……あれ?甘い?美味いな、血じゃないのか?木の実とか?)
頭の中をクエスチョンマークでいっぱいにしながら、いつの間にか美味しさで、自分の手で哺乳瓶を握り飲んでいた。その姿を見て、ホッとひと息ついて見守っているルシアノは、ふと疑問に思った。魔王と言えどまだ赤子であるのに大人しすぎるのでは、自意識が有りすぎるのではと。実は魔王リリオネル、これまでの魔王とは少し違う出生の仕方をした。暗く大きな沼や湿地帯が多いこの魔界には[王の大樹]と呼ばれている巨大な木が
「陛下、美味しいですか?」
「うー」
(美味い)
「お召し物はそちらの物で構いませんか?」
「う」
(親切なヤツだな)
言葉は喋れないが、受けた声にちゃんと頷き返す。これは既にある程度の知能が備わっているのだと確信したルシアノは、控えていた侍女に対して魔王の御目付け役ハヴァルを呼んで来るように
「嗚呼、お待ち申し上げておりましたっ…“
よく分からない内に、理解の及ばないところで有り難がられているリリオネルはされるがままになっていたが、ズドドドドッ!という大きな音が近づいてきて気が逸れた。轟音の元はラビタルだ、侍女からの言付けがあっという間に広まって城内は勿論、城外にまで広まって大混乱になってしまっているのだ。
「ルシアノ!!陛下が“永久の王”であるかも知れないとは
この言葉と同時に入室してきた彼は、ただ現状を見守っているルシアノに走り寄って肩を鷲掴みにすると、前後にガクガクと揺らした。身体を揺さぶられながらも、シッカリと頷いて噂が真実であることをラビタルに伝えた。
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