14.彼の者は常に独り針の山で卑屈に酔う

 閑話休題いんたーみっしょん


 コンコルド効果という言葉を知っているだろうか?

 これは経済用語で、コンコルドとはフランスの音速旅客機おんそくりょかくきコンコルドのことである。コンコルドは1969年に初飛行し、1976年から2003年まで運用された旅客機である。当然だが、人類の歴史の中で唯一、音速マッハで旅客業務をこなす民間の飛行機となった。

 コンコルド効果とは、いわゆる株式で言う『損切そんぎり』に関わる話である。


 音速旅客機コンコルドは、とても美しい飛行機だった。

 だが、音の速さで飛び、なおかつその中に『なんの訓練も受けていないごく普通のお客様』を乗せるのは、至難しなんわざだった。まず、コンコルドは燃料を馬鹿みたいに喰う。その上で、乗せられる客数は100人にも満たない。

 ようするに、コストがかかり過ぎるのである。

 勿論もちろん、ビジネスの世界は『時は金なり』だ。

 ロンドンとニューヨークの間を、もの凄い速さで行き来できる、これには付加価値ふかかちがあるだろう。だが、その値段があまりにも高ければ、それは『遅い飛行機で行くことで生じる損失』を、チケット代が上回ってしまう。コンコルドで急いで駆けつけたビジネスで生じる、利益をも食い潰してしまうのだ。


 コンコルドは、常に全て赤字路線だった。

 そして、

 もうおわかりだろうか?

 そう、コンコルドとは『決して利益を生まない存在』であり『やめるのが早ければ早いほどよかった』という飛行機なのだ。

 だが、三十年近くコンコルドは飛んでいた。


 何故なぜか?


 どうしてか?


 答えは簡単だ。


 音速の旅客機を造ったという、その成功を捨てられなかったのだ。


 コンコルドには、当時の最新鋭技術が惜しみなく注ぎ込まれている。空にたずさわる全ての人の、情熱と夢の塊……それがコンコルドだ。

 これが道楽だったら、さぞかしいいだろう。

 これが芸術だったら、とても美しい作品だ。

 だがコンコルドは、旅客業務に使用される商用飛行機ビジネスジェットなのだ。お客様を乗せて飛ぶことで、利益を出すために造られた商品なのだ。だから、利益が出ない限り、美しくても速くても、実は全く意味がないのである。

 この辺、商業創作の本や漫画、映画とも似てますね。

 作品である前に、商品、そして製品。

 金にならない自己満足なものは、商売の世界では無価値です。

 勿論、本来は創作物に貴賤きせんなどなく、見た人それぞれ個人が主観で『いいね』『いまいち!』『刺さる!』『フル勃起ボッキ!』等、好きに評価すればいい。俺が熱意を持って書いた十万文字の長編小説も、ピカソが画用紙に引いた一本の線も、等価値。触れた人に響くか響かないか、そしてそれは数で良し悪しを語っていいものではない。


 ただし、商売となると話は別です。

 そして多くの場合、商売、事業は一人では成り立ちません。特に創作の世界では、これが商売として成立するために、多くの人間が関わってくることになります。

 出版なんかは、チームワークなんです。

 だから、売れなきゃ駄目なんですよ。

 売れれば、関わった人たち全てが利益を得ることができる。

 同時に『あの人は売れる小説を書いたぞ』と、実績になる。実績のある人間なら、例えば『あのう、ロボ小説書きたいんですけど』って言った時、編集部や出版社も態度が違います。実績を作り、関わる全ての人がご飯を食べるために、本は売れるべきなんです。




 話がそれました、コンコルド効果。

 これは単純に『今までの投資が無駄に終わるのが嫌で、損をするとわかっていても事業を続けてしまう』という、一種の悪癖あくへきのようなものを語った言葉です。

 これをFGOに照らし合わせてみると、つまりこういうことです。


 今までガチャで引いたサーヴァントが、ゲームをやめることで全て消えてしまう。だから、これからも苦しいとわかっていても、FGOを続けるしかない。でも、今すぐやめれば浅くてすむ傷口は、今も広がりながらんでいる。

 こういう感じですかね。

 ながやんの現状そのものです。


 今、まさに自分にとっての分水嶺ぶんすいれいです。

 この瞬間にFGOをやめれば、今後ずっとFGOに悩まされることもないでしょう。あの『嫌ならやめろ』という声も、聴こえなくなるはずです。

 今、この世の中には千本以上ものソシャゲが存在します。

 こうしている今も、新しいソシャゲが生まれ、古いソシャゲが運営終了しています。中には、という妙なソシャゲもちらほら……世は正に、群雄割拠ぐんゆうかっきょのソシャゲ戦国時代ですね。

 FGOの他にも、ソシャゲはいっぱいあります。

 アズレンなんか、遊んでて優しいいいゲームだなと思います。

 でも、FGOでしか味わえないもの、それも確かにあるんですよね。

 あと、やっぱりお招きしたサーヴァントがかわいいのです。我が子のように愛おしいんです。ガチャはぶっちゃけ運なので、自分の幸運がお招きできた、自分の好きな英霊や偉人、神様たち。ちょっとお別れするのは、忍びないですね。


 そろそろ、このコラムだかエッセイだかよくわからない文章にも、終わりが見えてきました。

 自分の考えをこうしてまとめてみると、ただのクズ人間ですね(笑)

 そして、思ったほど踏ん切りがつかないもんだなと驚いています。

 自分の苦しみを吐露とろすれば、気持ちよくFGOをやめられると思いました。

 そうでもないんだなーと思うと、意外な気持ちですね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る