第23話 タダで面白いモノが観れるサイトの話

電車の中に若い女の声が響いた。

「えー、漫画ってタダで読めないの? なんでー?」


隣にいる男がそれに応える。

「読めないよー。普通は、お金払うの」


「だって、無料で読めるサイトあったのにさー」

「それ、試し読みとかやってるだけだろ?」

「違くてー、全部読めるの」


「それ違法な所じゃん」

「えー? そのサイトには”違法じゃない”って書いてあったよ」

「それ嘘だって」

「でも、みんなやってるしー」


「お金払わなかったら、漫画描いてる人給料ないじゃん」

「知らないよー、そんなのー」

「お前だってバイトして給料なかったら嫌じゃね?」

「それは嫌」


「だったら、ちゃんとお金出そうよ」

「私が稼いだお金、タダで読めるものに払うのおかしいよー」

「タダで読めるのがおかしかったの!」

「えー?」

「ほら、そのサイトやってた人捕まったって」


男はスマートフォンの画面を女に見せた。

そこには『サイト運営の男性 著作権侵害の容疑で逮捕』という

ニュースが流れていた。


「ほんとだー」

「な。違法だったんだって」

「私も捕まっちゃう?」

「それは大丈夫じゃね?」


「なら良いや」

「これからはちゃんとお金出そうね」

「わかったー」


そう言ってスマートフォンを操作し始めた女は、

少しして嬉しそうに男に言った。


「ねぇねぇ! すごいサイト見つけた!」

「またヤバい所じゃないの?」

「ううん。大丈夫。ちゃんとした所みたい」

「えー……はぁ、ほんとだ。ここは大丈夫そう」


「でね、この人の生活、ライブ配信するんだって」

「へー。それで、広告料がサイトに入るって仕組みか」

「ね、この人でしょ? さっき捕まったって男の人」

「だね。この顔だった」


「今まで違法に稼いだ分、広告で稼いで賠償するまでずっと生活ライブ配信だって」

「その刑、死ぬまでかかりそうだね」

「再生回数稼ぐために色々やらせる予定だって書いてあるよ」

「俺もチャンネル登録しとこ」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る