第6話 そりゃ大騒ぎになるよね?
教室に戻ったら騒ぎになってるかも、僕のそんな不安は徒労に終わった。
どうやらまだ入学3日目な為に、生徒会に呼び出されるという事が珍しい事なのかどうかもわからないって事だったらしい、それは後からわかった事なんだけど。
ただ恐らく2年以上は特に会長のクラスは何かしらの反応あるだろう事は予想出来た。
なので会長には僕の事は幼なじみって事にしてとお願いした。
まあ、ある意味2000年以上前に知り合っているのだから幼なじみで間違いないんだけど……
しかし、安心していたのも束の間、午後の授業が終わり帰宅しようと席を立つと何やら教室の前の方が騒がしい……数十人の生徒達で人垣が出来ている。
誰もボッチの僕には教えてくれない、なんでも自分で見て調べなければと、僕はその人垣を後ろからそっと覗き混んだ。
その人垣の前、教室の入口にいたのは、学園の生徒会長、学園のアイドル、そして僕の僕(しもべ)だった……あ、ヤバい……放課後来るなとは言っていなかった。
未だ彼女の言う事を信じるわけでは無いが僕の身体から何かを発しているのか? 入学式同様に会長は目ざとく人垣の後ろにいた僕を見つけ満面の笑みを浮かべる。
男女問わず全ての人類を撃ち抜く様な、兵器の様な笑みを見せられ、皆腰が砕けそうになっていた。しかし次の瞬間クラスの皆は一斉に一つの方向を見つめる事となる。
「ごしゅ、
うん、僕ご主人様は止めようねって、主真って呼んでって言った。だから今一瞬言おうとして言い直したよね、約束通りだよね、さすが会長、さすが僕の僕(しもべ)……でもさ、意味無いよね? 先輩で、生徒会長で、学校のアイドルが新入生で、居るんだか居ないんだかわからない一生徒に対して様なんて付けたら、お迎えに参りました……なんて言ったら……えっとどうなるか空気読めない子なのか会長って……。
クラスの皆は一斉に僕を…………あれ? 皆お互いの顔を見ながらキョロキョロしてる……ああ、そうか、僕の名前なんて皆覚えてないよね、ヤバい泣きそう……でもセーフだよセーフ。
僕はこの千載一遇のチャンスものにするべく、そっと人垣を後にしようと踵を返した。が、当然この教室に自ら僕を迎えに来る彼女、そんな人にこの状況、この空気を読むのはやはり無理だった。
「主真様! お待ち下さい!」
あーーうん、そりゃ呼ぶよね、うん、わかってた、僕今こうなるのわかっててやった。
「「えええええええええええ!」」
ここに来てクラスの皆は僕がその主真ってわかったらしい……はいどうも初めまして僕がご紹介に預かりました主真でございます。一応最初のホームルームの自己紹介の時に言ったけどね……。
そして人垣がモーゼの海の如く割れ、その間から彼女が僕の方にゆっくりと歩み寄る。
「行かないで下さい主真様」
捨てられた子猫の様に僕を寂しそうに見つめる会長、うわ、何この可愛い生き物、マジで連れて帰りたい……。
「あ、うん……ごめん」
「いいえ、さあ参りましょう」
「え、えっと……どこへ?」
「どこへでも、私は主真様と一緒ならばどこにでも参ります」
「どこへ……でも」
会長ウルウルとした瞳で僕を見つめながらそう言うと周りにいたクラスメイがザワザワと騒ぎ出す。
「ちょっ、ちょっと待って二人共、えっと……どういう関係なんですか?」
ザワザワと騒ぐ人垣の中の一人、僕が唯一知っているクラスメイトがクラスを代表するかの如くそう質問してくる。
その娘の事を僕は知っていた。彼女は僕と同じ中学だった、平入
その見覚えのある奴が入学早々生徒会長と知り合い、どころか、様を付けて呼んだり、教室まで迎えに来たりとただならぬ関係に興味が沸いた様で、僕達にそう聞いてきた。
「どういうって……」
そう言われてもどう答えて良いか……僕は会長の顔を見た。すると会長は平入を見るなり驚きの表情に変わった。
「会長? 遠矢さん?」
反応が無いまるで屍の様だ……いや、そんな冗談を言っている場合じゃない、また会長が止まってしまった。一体会長はなんに驚いているんだ? まるで入学式のあの壇上の上の様になっている。
「会長!?」
僕は慌てて思わず大きな声を出してしまう。すると会長の身体が一瞬ブルッと震え、平入から目を離し僕を見つめる。
「ご、ご主人様ぁ」
か細い声で僕をそう呼ぶ会長、や、ヤバい……
「ご主……人……様?」
一番近くにいた平入さんが僅かに聞こえたようで、さらに不思議そうな顔をして僕達を見つめる。
「えっと、会長何か気分が悪いらしいんで、ちょっと行くね?」
「え? だ、大丈夫? そう言えば顔色が……」
見ると白い顔が青ざめている、ヤバい本当に具合が悪いらしい。
「あ、うん、だから詳しい話はまた今度ね、僕会長送って帰るから」
「あ、うん、こっちもなんかごめん」
平入さんがそう言うと他の皆も遠慮して僕達から離れて行く。なんだかんだで良い人達なのかな? うちのクラスって……僕はそう思いながら会長を支えつつ教室を後にした。
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