第3話 天からの啓示
入学式から3日、そろそろクラスでグループが出来初め、昼休みともなると、各々仲の良い物どうし教室や中庭、学食等で食べ初める。しかし僕は入学式の衝撃が今だ頭から離れず、会長を一目見たいと休憩時間や昼休みの度に教室から抜け出し、生徒会室や2年の教室前をウロウロしていた。
決してボッチが目立たたない様にウロウロしているわけではないんだからね……か、勘違いしないでよね……ううう。
まあ、あんな凄い人、僕なんて相手にして貰えないのはわかっている。近づく事さえ許されないって事も十分にわかっているつもりだ。可愛い綺麗だけでは言い表せない、そう、いわば神々しい存在。だから遠くからでも良い、会長の後ろ姿でも見れたら……そのお姿を少しでも拝観出来たら、拝めたなら……僕はそれだけで幸せになれる。僕の家は無宗教だけど何か宗教じみた感覚が今僕を襲っている。
「会長に会いたい……」そう思いながら夢遊病の様にフラフラと会長のお姿を探し僕は学校中をさ迷っていた。
「何処にも居ない、やっぱり教室の中なのか?」
僕は会長が2年のどのクラスか知らない……勿論聞ける友達もいない。ましてや上級生に聞く事も、教室を覗く事も僕には出来ない。ただ廊下を2年生の教室の前をなるべく目立たない様にウロウロするだけ。
「――やっぱり居ない……」
何度か教室の横を通り過ぎ、横目でチラチラと見るが見当たらない。あんなに綺麗で光っている人なら、たとえ何処かで閉じ籠っていても必ず見つかるはず……なのに彼女の姿は学校のどこを探しても見つからない……一体どうしたのか……。
入学式突如喋らなくなったのと何か関係あるのか? 何か大変な病気にでも……僕は心配でいてもたってもいられなくなっていた。
もう勇気を出して2年生の誰かに聞いてみるか……でも……。
どうしても躊躇してしまう、いつもそうだが本当に自分のコミ障が憎く感じてしまう。
やっぱり僕は変われないのか……好きになった人が何か重大な病気になったかも知れないというのに……。
僕は自分の事が嫌いだ。情けなくて、優柔不断で……そして今そんな簡単な事、会長のクラスを聞くなんて事さえ出来ない自分の勇気のなさに辟易していた。
「――――やっぱり僕なんて……」
そう諦め始めた時、そう思い始めた直後、校内に設置されているスピーカーから、あの美しい声が、入学式で聞いたあの美声が、学校に響き渡る。
『1年F組の比良坂
突如探し求めていた宝物が目の前に現れた感覚、心の中で跳び跳ねる。いたーーー! 会長がいた! 夢か幻か、ひょっとしたら会長どころかあの入学式自体嘘だった? それこそ僕がこの学校に合格した事が嘘だった? いや、僕の存在自体が幻だった? そこまで思い始めていた時、正に天からの啓示の様に頭上から天使の、いや女神の声が響き渡った。
「ああ、神はいた……」
僕はその場で目を閉じて膝を付き天に向かって手を合わせたい位の気分になる。
しかしすぐに違和感が僕を襲った。あれ? 今女神は僕の名前を呼んだよね? いや、そんな筈は……同姓同名? でも……1年F組にひらさかかずまは僕だけのはず……そして最大の疑問が……。
「……様?」
生徒会長が1年を呼ぶのに様を付ける? そもそもなんで僕を? 今の所何も問題は起こしてないはず。いや、そもそも僕は未だかつて問題で呼び出された事なんてない。
突如として沸き上がる不安、疑問、恐れ、しかし……これはある意味チャンスなのかも知れない。
たとえどんな理由があるにせよ、生徒会長と、遠矢
不安、疑問、恐れ、その全てが好奇心に変わる。
「行かなくちゃ……」
僕は踵を返し生徒会室に向かう。
何が待ち受けているのかわからない……けど、何かが変わる、僕の高校生活が、僕の人生が、そう予感していた。
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