私の言う事を聞きなさいっ!【連載版】
南河原 候
プロローグ
僕には好きな人が居る。それは隣に住む幼馴染だ。テンプレだけども、好きになってしまったものは仕方ない。
この気持ちは小さい頃から変わらない。ずっと幼馴染が好きだった、憧れだった。でも、想いは伝えず、ずっと側で見続けていた。
それで、僕はそんな幼馴染に高校受験を終えて、受かったら告白をしようと思う。まあ、多分受からなくても告白だけはするだろうけど。ただ同じ高校に行けるか行けないの差だし、家が隣同士なら何時でも会えるしね。前向きでいかないと!
そして、僕は幼馴染と同じ高校に受かり、その帰りに告白をしようとしていた。
真っ暗になった商店街を街灯の光が灯す。周りはシャッターが閉まっている店があるだけのムードの欠片もない道を幼馴染のレナと歩く。周りには人影はない。それに三月と言ってもまだまだ寒い。吐く息が白くなる程に。
「まさか、あんたが受かるとはね」
「あはは、頑張ったからね」
レナと一緒の高校に行きたかった、でもレナが受けるのは僕の頭では少し偏差値が高かったから受かるのは怪しかったが、何とか受かったのだ。
はあ、レナには本当に感謝をしなければならない、受験一週間前になったらずっと勉強を見ててくれたんだ。夜中まで付き合ってくれた時もあった。恩返しはどうしようかな。嫌がられそうだけど。
ちら、とレナを見る。背は低いものの、端正で可愛らしい顔立ちをしている。さらさらとした長い銀髪をポニーテールにしている。
今は白色のダッフルコートに灰色の短めのプリーツスカートを着ている。細長い脚には黒色のタイツを履いている。そこは色ぽっいと思う。彼女なりの背伸びだろう。
顔にもモコモコとした耳当てを付けてたり、口元まで隠す長いマフラーを巻いている。これを見る以上レナは寒がりだと思える。まあ、その通りなのだが。
何時もはフレアスカートやシフォンスカートといった長めのスカートを履いているのだが今日は受験の合格を見に行った時で制服で出向いた為に短めのプリーツスカートと言う訳だ。
ああ、可愛い。今直ぐにでも抱き締めたい。でも、それは告白が成功してからだ。正直に言えば、怖い。断られたら何時も通りに出来るだろうか、そんな事が頭を過る。でも、しないと何時までも変わらないままだ。
幸いにも僕は周りから顔立ちは良いと言われる。もしかしたらレナが好む顔だったと望むしかない。
よし、心は決まった。もう当たって砕けろだ。
そして、僕はレナに言葉を振るう。
「でもね、頑張れたのもレナが居たからなんだ」
「いや、私は関係ないでしょ」
僕は首を横に振るう。そして足を止めた。レナも足を止めて此方に身体を向ける。不思議そうに首を傾げるレナ。言うぞ、僕は今一歩前に進すむんだ。レナの肩に手を置き、しっかりとレナの大きくてぱっちりとした金色の瞳を見る。とても綺麗で潤っている。
「その、僕は!───レナが好きなんだ。ずっと、ずっと、好きだった。だから僕と付き合ってくれませんか?」
言った、言ってやったぞ。
やったと言う達成感もあるが、後悔もある。これをしなければこれからも友達としてずっと仲良しで居られるのではと。
「………本当に?」
「え。うん、レナが好きなんだ。子供の頃からずっと、ね」
「へ、へぇー、そうなんだ。でも、その、私は背も大きくないし、胸だって小さいよ?」
「だから、そんなのどうでも良いから。好きなだけじゃ駄目なの?」
「どうでもって………………駄目じゃないけど」
この反応、もしかしたらレナは受けてくれるのか? レナは顔を少し朱色に染めて目を逸らしたり僕を見たりの繰り返しをしている。これはいきなりの事に動揺しているのか。
これは、押せば行けるのでは? いや、でもそんな無理にやるのは、流石に………。
「その、答えはまた今度で良いから!」
咄嗟に出た言葉がそれ。ああ、情けないここで逃げるとか。何時もそうだ、僕は肝心は時に最悪の場合を想像してしまい逃げようとする。そこは昔と変わらない短所だ。
足を一歩前に出した時───レナの手が僕のコートを掴む感覚がした。僕は驚きながらも後ろに振り返る。そこには顔全体を真っ赤に染めたレナが居た。
「その、アキ、告白された方に「権利」があるって知ってる?」
「え。権利?」
権利ってなんだろう。告白を受けるか断るかの選択権利の事かな? でも、そんな事を一々訊くか? 全く分からない。
そして、レナは顔を上に上げて、顔を真っ赤にして、澄んだ金色の瞳が一瞬キラっと光り、僕にこう言ってきた。
「だったら! アキはこれからはずっと私の言う事を聞いてなさいっ!」
「え」
「良い? アキは私に告白したの! だから、あきの全てをどうするかも私の『権利』なの!」
「はいっ!」
権利ってその権利か。まあ、レナに縛られるなら別に良いけど。あ、言っとくけど僕はドMとかじゃないぞ? レナだから良い訳で他人だったら嫌に決まっている。
「なら、よし! 帰るわよ」
「うん」
レナが身体をさっと前に向けて歩き出す。その時、ポニーテールしているレナの髪が優雅に揺れた。
分かっている。遠回しな言い方だけどちゃんと理解はしている。長年の付き合いだからレナが言いたい事は手に取る様に分かる。
もう、レナは素直じゃないんだから、“好き”って素直に言えば良いのに。でも、そこがレナらしくて良いのかな。
僕は先に行ってしまったレナに小走りで追い着く。その時、レナの手をそっと取り、握ろうとするとレナから指を絡まされ“恋人繋ぎ”と言うものをされた。これは、彼女なりの意思表示なんだろう。
「レナ、これから宜しくね」
「………バカ」
レナは顔を外方に向かせて言う。でも、横からでもレナが頬を赤くしているのは分かる。
これは、少し素直ではない彼女と僕の高校生活の模様を示す物語である。
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