余津谷海道七拾半塔

エリー.ファー

余津谷海道七拾半塔

 斬ったよね。

 わし。

 斬ったよね。

 なんでなん。

 なんで、死なないの。

 わし、あれよ。

 宮本武蔵よ。

 くっそつえぇよ、マジで。

 だって、二刀流だし。

 普通につえぇし、普通に買ってきてるからね。

 漫画とか小説とか、いっぱい出てくるじゃん。

 そういうこと知ってのやつ。

 ねぇ、これ、そういう系なの。

 ちな。ねぇ、ちな。

 敬ってる。

 わしのこと。

 敬ってのこれなん。

 来てるなぁ。

 お前、やってんなぁ。あれかぁ、宮本武蔵の名前使って、一旗あげようとか思ってる系だろ。おい。なぁ、そういう系か。おい。

 ラッパーじゃねぇんだから、今時、ビーフとか流行んねぇよ。やめときなって。

 そういうとこだぞ。

 え。

 何。

 何言ってるのか、マジで分からんのだけれども。おい。

 なんか、あれじゃん。皮膚とか千切れてない、それに、肉とか超もろけてない。骨、出てるし、眼球落ちてるし。

 あ。

 その眼球踏みつぶしてるし。

 あぁ。

 マジか。

 マジゾンなの。

 これ。

 マジゾンなの。

 バイハーじゃん。

 ガチのバイハーじゃん。

 クソうけるんだけど。

 刀の錆にもならんって、これじゃあ、それに斬ってなんなの。別に名前もあげられないし。実際、佐々木小次郎あって、まぁまぁあったよ、ネームバリューは。

 でも。

 なぁ。

 ゾンじゃなぁ。

 ゾン斬っても、名前売れないし、懸賞金とかもないし。

 斬るだけ無駄だし。

 わしからしたら、そこら辺の猫殺すのとなんら変わらんし。

 噂には聞いてたけどもぉ。いるんだぁ、ゾン。

 由方藤一郎とか、言ってたけど嘘だと思ったわ。あいつが夜中に酒飲みすぎて漏らした所、撮ってネットにあげたからって、それに怒って、パチこいてきたかと思ってたわぁ。

 でも。

 そう考えると。

 こいつ斬れば。

 それ、流せば。

 バズるかなぁ。

 バズるか。

 いや、絶対バズるな。

 おし、斬ろ。

 


 たまんねぇ。

 これやべぇ。

 肉が腐ってるから斬るのめっちゃ楽しい。何度も何度も切れるし、それでも立ち向かってくるから、マジで斬りがいがあるわぁ。

 人間切るより断然良いって、これ。

 なんか、こいつら集めて別の商売やろっかなぁ。何か、ある程度意思とかはあるみたいだし、そういう所利用できるかなぁ。

 人材派遣会社とか、あっ、行けそうだけど。

 わし、そういうの興味ないしなぁ。

 それに、パクるのなぁ。

 じゃあ、あれだ、ストレス発散系居酒屋。ゾンビを檻の中に入れて、外から刀とかでぶっ刺して楽しむみたいな感じ。

 あ。

 いける。

 というか。

 いったわ。

 わし。

 来た。

 もう、株の売買とかそういうことしないで、こっちやろうっと。そうしたら本屋にわしの本とか絶対並ぶでしょ。

 空前のビジネス本ブームだし。成功者になればいくらでも、稼ぎ方なんてあるんだから間違いない。

 あと、二三回斬ったらこいつらをあそこにある縄でまとめて、あそこの木に括り付けておこう。今はちょっと用意ができてないし、ちゃんとできたら迎えにくればいいし。

 いやぁ。

 わし。

 来たね。

 わし来ちゃった。

 もう、刀の時代じゃないって、これからはゾンの時代。そんで、ここがもの言う時代。

 わしも変わらんと。

 うん。

 時代と共に変わらんと。

 じゃあ、最後にもう一回斬ろうっと、な。

 それ。

 ほいっ。



「この酔っぱらい、てめぇ憶えておけよ。ぶち殺してやるよ、このクソが。」

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