第13話 フェアじゃない

 うーん、どうしよう……いつもならこの時間はまだティータイムで、ローランさんとお喋りしてるんだけど……。

 そう言えばローランさんはいつ帰ってくるんだろうなぁ。


「勇者様、お待たせいたしました」

「わっしょいっ!?!?!?」


 びっ……くりした~!!!!! 

 この場に居ないと思っていた人物の声が突然聞こえると人間って驚きで心臓潰れそうになるんですね……怖……。


「あぁ、驚かせてしまいましたか? 申し訳ありません」


 そう言って爽やかに微笑むローランさんはもういつも通り大人の余裕たっぷりという感じのローランさんだ。


「あの……」

「はい、何でしょうか」

「……いえ、何でもないです」


 まぁ蒸し返すような話でもないし何か訊くのはやめて、照れ顔拝めただけで良しとしよう! 激レアだし!! 


「……あー……でも、強いて言うならローランさんの紅茶が飲みたいなぁと」

「……勇者様は本当に……」


 何故かローランさんが右手で目の辺りを覆った。

 ……少し耳が赤い気がするので、もしかしたら照れているのかもしれない。


 うーん、やっぱりローランさんの照れるタイミングが分からない……。


「はぁ……いけませんね、『わたくしだけ』というのはやはりフェアではありません」


 小さくため息をついて、そうぼそりと呟いたローランさんが一気に距離を詰めてくる。


 えっあの80㎝の距離を意識してるって話は? 


 そんな言葉を言うことは、叶わなかった。


「先ほどや今のような発言をわたくし以外へ向けてられては、いけませんよ?」


 えっ


 ローランさんがサッと再び80㎝距離に戻っても、先ほどの至近距離での破壊力隕石な微笑み&発言で思考が上手くまとまらない。

 声すら出なくて魚のように口をぱくぱくするだけの今の私は恐らく誰の目から見ても間抜けだろうけど、異次元レベルのイケメンからあんなことをされて平静を保てるほど私はイケメン慣れしていない。


 だめだ、顔熱すぎる……。


「勇者様。

 身分もわきまえぬ無礼、申し訳ありません」


「……仕返しですか……」


「いえ、私などが仕返しなどと烏滸おこがましくてとても……。

 今のはただの、召喚士の茶目っ気と男の矜持です。好意を持つ女性に赤面させられるだけでは貴女様に釣り合えませんから」


『フェアじゃない』ってそういうことですか……。


「……そっちの方がよっぽど破壊力あるじゃないですか……」


 あんなのそれこそ『フェアじゃない』ですよ……!

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さぁ勇者様を崇め奉れ!!! 湊賀藁友 @Ichougayowai

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