第五章 ~迷宮攻略編~
第32話 新たな挑戦の始まり
デルカの襲撃をは無事に凌ぐ事が出来た。
実行犯の男達は事情聴取の為、しばらくデルカで身柄を拘束されるそうだ。
だがあまり長く拘束しているとロベルト伯爵がうるさいという事もあり、程々の所まで情報を聞き出せれば彼らをロベルト伯爵に引き渡す事になっているらしい。
お陰でまた魔の森の再調査が遅れるとカイエルさんが愚痴っていたのだが、仕方のない事だろう。
その後は何事も無い日々が過ぎ、長期休暇は終わりを告げた。
「さーて、気乗りしねぇが……今日も行きますかー」
「だね。じゃあリル、いい子で待っててね」
ヘスターにある王立スティージ学園に備え付けられた寮の一室、そこで僕はリルと名付けた小さな狼を撫でていた。
僕が頭を撫でるとリルは嬉しそうに目を細め、子犬と同じように振る舞うこの子はフェンリルの子供だ。
リルが無闇に他人を傷つける事は無いが、一応
当初は難航するかと思われた許取りはすぐに済んだのだが、それは前例があったからだ。
僕と同じように魔物を飼おうとする人は一定数存在するらしく、ある程度の制度が整えられていた。
そしてハンターランクがⅢに上がっていた事もあり、ギルドからの許可からはかなり簡単に得る事が出来た。
許可を取れれば、家に預けるのも問題が無い。
そう考えていたのだが、何やらリルは僕以外にあまり懐かなかった。その為家に預ける事も出来ず、僕が学校で世話をする事にした。
仕方なくリルを連れて学園に戻ってからは同学年生を受け持つレダ先生の目に止まり、幾度か小言を言われるという事があった。
だがロイがレダ先生と小話をするとそれも無くなり、校内を連れ歩く許可を出してくれた。
事情を話してくれたのだろうか……?
後に聞いた話だが、僕のように魔物をペットにする生徒は今までに何人か居たらしい。
だが大抵は檻に閉じ込め、無闇に痛めつける事を目的として飼う人が多かったそうだ。
それが理由で、連れ歩ける程に大人しいリルを見て驚く人が多い……らしい。
寮母さんにも事情を話しており、ある程度は自由に歩いても良いという事になっている。
成熟した個体であるフェンさんは人語を介する程に知能が発達していたが、リルもある程度理解しているらしい。
言付けは守ってくれるが、それでも寂しいらしく顔を擦り付けていた。
――――――――――――――――――――
「おはようございまーす! 皆さん席に……もうついてますね。今日は今後の授業に関わる話をしますよ~」
長期休暇が終わってもクラスの雰囲気は変わらずだ。
そんな教室でキャロル先生が話したのは、学園が管理運営する人工迷宮……マキシムラビリンスという場所の事だった。
「いや~、申請自体は去年からずっと出してたんですが……シルヴィ先生のお陰でようやく許可が下りました!!」
かなり苦労していたらしく、キャロル先生は心底嬉しそうに説明を始めた。
まず迷宮へ入るには、セーフティリングという迷宮専用の魔道具を付ける必要がある。
トーナメントで使用した魔道具と同じような見た目をしているのだが、機能もほぼ同じ様な物だ。
その理由はトーナメントで使用した魔道具が、迷宮で使用されていた物を改造した物だったからのようだ。
そしてセーフティリングの持つ機能は一定以上の攻撃を受けた場合に発生する防壁、防壁が発生した際に行われる迷宮外へ強制転送の二つだ。
強制転移はセーフティリングを付けずに入っても起きる現象らしく、迷宮側の機能と考えられているらしい。
また迷宮内の魔物は迷宮特有の魔石を落とす。
これは学園外では使用出来ず、学園内で換金する事が出来るようだ。そうして得たお金はヘスター内の店だけで使えるらしく、多くの生徒がこの迷宮を利用しているそうだ。
「――そして次の長期休暇までに完全攻略する事。それが迷宮を使う条件ですので、皆さん頑張って下さいね!」
キャロル先生は笑顔でそう言ったが、完全攻略した生徒は少ないとの噂だ。
――もしかしてキャロル先生はシルヴィ先生に騙されたんじゃ……?
「あ、3層からは対人戦を意識して戦うと良いらしいですよ。頑張って下さいね!!」
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