【閑話】 策略と王子様






 デルカから遠く離れた、ロベルト伯爵の屋敷。

 そこでは屋敷の主である、フレデリック・ロベルトが部下からの報告を受けていた。


「――ロベルト領より放った農民は、その全てがハンター達に掴まりました。多少金品の強奪や施設の破壊には成功したようですが……」

「フン、奴らは呆気なく倒されたか。……まぁ良い、必要な情報は集まった」


 今回の襲撃を仕組んだのは彼だ。これまでも数回程襲撃を仕掛けていたのだが、その全ては失敗に終わっている。

 その原因の一つは今ロベルト伯爵の手元にあるような、デルカに関する情報が無かった事だ。

 書類には今回の騒動で起こった全てが記録されており、彼がする今後の行動全てに響く程重要な物だった。


 彼らは僅か数十分でその全員が捕縛されたようだが、同じ程度の力を持った魔物との戦闘から考えると大分遅い結果だ。

 その原因は手加減が出来ない事、そして動かせる戦力が少ない事にあった。


「今回は偶然依頼が多くて助かりました」

「あぁ、お陰で奴等を送り込むのが楽だった。あとはジェシカの働き次第だが……」


 そうしてロベルト伯爵が次の一手を考えていると、部屋の扉が勢いよく開かれた。


「お父様、連れてきたわよ!!」

「ジェシカ、この部屋に入る時はノックを……ッ!」


 ロベルト伯爵は驚愕にその顔色を染められるのだが、それはジェシカに案内されて現れた一人の男が原因だった。


「やぁ、面白いことをしてますね。僕も一枚噛ませて下さい」

「あっ、アンドレイ第二王子……!!」


 彼の名前はアンドレイ・スティージ。

 スティージ王国の第二王子、その人であった――





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る