第31話 二人はお似合い?

日が暮れる寸前まで遊んだ後、先程のウッドデッキでバーベキューをするために俺と涼で少し離れた小さなスーパーへ肉を買いに来た。野菜は予め買っておいていたため、コテージの方で茅秋達が調理を始めて貰っている。肉を現地調達することにしたのは、生ものを長時間持ち歩くにはいかなかったからである。この暑さだと保冷バッグに入れていても鮮度が保たれるか心配だ。


串に刺して焼くつもりなので、かたまりで売っているものを選ぶ。涼の希望でホタテやハマグリも買い物かごの中へ入れる。

6人分もの肉でいっぱいになった買い物かごをレジへ持っていくと、店員に一瞬ぎょっとした表情を浮かべられた。金額も後に六人で割り勘すると分かっていても驚くべき数字だった。



店を出てコテージへと戻る途中、



「なぁ、悠。頼みがあるんだけど」

「……滝野のことか?」



涼が真面目な顔で話す内容はいつも決まって滝野のことである。



「ああ。今日、どっかのタイミングで二人きりになりたいんだ」

「告んのか?」

「いやいや! ただ少し他愛ない話をしたいだけだよ」



からかうと耳まで真っ赤になって否定した。涼の反応が面白いので最近こうやってイジっている。



「了解。他の三人は違う所に適当に呼んでおくよ」

「助かる!」



涼は純粋で真っ直ぐなやつだから、ひたむきにアプローチし続ければお堅い滝野も振り向いてくれると思う。




コテージに着くと、キッチンに茅秋と伊深さん、外のウッドデッキに夏恋と滝野がそれぞれ作業していた。俺達の帰りに気付いた茅秋が駆け寄って来る。



「悠くん、お帰りなさい。お疲れ様!」



そう言って俺の持っていた大きな買い物袋を受け取ろうとするが、それを手で制止した。



「…? 持つよ?」



制止された理由が分からなかったのか、彼女は首を傾げて目の前に出された手のひらに軽くハイタッチした。



「……重いから俺が持ってくよって意味なんだけど……」

「え!? あ、ありがとう……」



勘違いしてハイタッチをした恥ずかしさからか、素早く手を引っ込めて赤くなってしまった。



「夫婦漫才はそこら辺にして、早く準備しようぜ」

「め、夫婦……!?」

「おい、漫才なんかしてないぞ」

「ふふふっ!」



涼にからかわれ、茅秋は益々赤くなり、静かに見ていた伊深さんが笑っている。さっきの仕返しか?



「あれ? 二人とも帰って来てたの?」

「お帰りなさい」



話し声に気付いたのか、デッキで皿などを並べていた夏恋と滝野が出迎えてくれた。



「帰って来たところ悪いのだけど、火を起こして欲しいの。何度やっても上手くいかなくて……」



滝野が外に置いてあるバーベキューコンロを指差して言う。


……これは早くもチャンス到来だ。



「涼がやるよ!」

「ほんと? じゃあお願い」

「え!? あ、任せてくれ!」



涼も察したらしい。

そして、滝野と涼がデッキへ出て行く。


夏恋も気付いたらしく、少しの間でも二人きりにさせようと中に残ってくれた。



「滝野も涼の気持ちに気づいてんのかな?」

「うん。分かってるみたいだよ」



彼女の親友である茅秋が答える。



「彩ちゃん、同い年の男の子に好意を寄せられるの初めてだから嬉しいんだって」

「そうなんだ。なんか可愛いわね」

「だよね~!」



茅秋と夏恋が外の二人を見ながら楽しそうに話す。

そんな中、伊深さんは脇目も振らずに黙々と一口大に肉を切っていた。色恋には興味ないのだろうか?



「伊深さんは好きな人っていないの?」

「……ボランティア部の皆は大好き」

「そういう意味じゃなくて……恋愛的なやつでさ」

「うーん……わ、分かんない……」

「なになに! 虹華ちゃんの恋ばな!?」



茅秋と夏恋が今度は伊深さんの恋愛事情に食らいつく。



「虹華の好きなタイプは?」

「えっと……優しいが一番かな……いざって時に守ってくれたり……」

「分かる! 私も同じ!」



夏恋が珍しくハイテンションだ。トラベラーズハイというやつだろうか。

伊深さんはグイグイ来られて困っていた。





その後も恋愛話に花を咲かせ、バーベキューが終わるまで全員が根掘り葉掘り好きなタイプを聞いたり、聞かれたり……

楽しいプチ旅行の筈が、いつの間にか合コンみたいになっていた。



しかし、まだ夜は始まったばかりだ。学生の夜は長い……

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