蒼穹の歌姫は夢境を探す。
Myua
0.ゆめ。
運命の赤い糸。
うんめいのあかいいと。
それは、魂と魂を結ぶもの。
結ばれた2つは、どんな境遇でも、何回転生しても、必ず結ばれる。
そう。
"結ばれている"ならば。
結ばれていなくて、複雑に"絡まっている"だけの2つが運命を共にすることはない。
どんなに愛しあっていても。
それは、少しのはずみでいとも容易く解けてしまう縁。
それなら、最初からないことにすればいいのでは、と考える。
そうだ、自分はそのために"ここ"に来たのだ。
目の前の机に置かれている2つの本。
その2つの、見えない、しかし、感じることのできる赤い糸が複雑に絡み合っている。
自分は、この2つの"縁を解く"ために来たのだ。
震える手を、心を必死に落ち着かせながら、ゆっくりと見えない糸を解いていく。
『…………』
解き終わってしまった。
片方の糸は、やっと解けた、とでも言うかのように別の本のところへ向かっていく。
辿り着いた先の別の本も、まるでそれをずっと待っていたかのように、それが当然のことであるかのように迎え入れる。
そして、しっかりと結ばれる。
わかっていたこととはいえ、やはり辛いと泣きそうになるのを抑え込み、その本を本来の運命の相手の横に置く。
これが本当の姿だと言い張るように、綺麗に納まってしまった。
ずっと机の上に置いてあった二冊の本。
本棚の空きは一冊分。
残された本は、これからずっとここで過ごすのだろうか。
ずっと、ひとりぼっちで。
蒼空色の表紙をそっと撫でる。
それの糸は行き場がなくてしばらく揺れていたが、もう絡まっていた相手が遠くに行ってしまったとわかったのだろうか。
寂しそうに、悲しそうに、そっと糸そのものを消してしまった。
それは、今の自分の心そのもので。
誰かと結ばれるための糸なんていらない。
自分は"
"
最強の管理者。
孤独な観察者。
もう一度、蒼空色の表紙を撫でた。
モノクロだった空間が一瞬で蒼に染まる。
この本に記されているのは"蒼穹の歌姫"と呼ばれた少女の物語。
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