第23話
「それじゃあ私は行くね!」
「おう、元気でな?」
「うん!!」
約束を交し、距離を縮めた二人は笑顔でそれぞれの契の証を掲げるとしばしの別れを告げ互いに違う道を歩き出す。
方や無自覚な勇者と方や悪魔と対峙し一歩も引かなかった守護者、この二人が笑い合い去っていく姿は童話の登場人物のように絵になっていた。
━━のだが
「ねぇ、教会ってどこだっけ?」
ミザリィのその一言によってその光景は壊され、金髪美少女が白髪美少女に色々と説明されながら申し訳なさそうにする微笑ましい光景に生まれ変わった。
~~~
と、本当の本当にミザリィとの別れも済ませたところで、俺はおっちゃんの店へと立ち寄っていた。
「よっ」
「なーにがよっ、だよ。緊急クエストのMVPなんて取ってきて」
「あれ?参加してないプレイヤーにも通知来たのか?」
「いや、サツキの嬢ちゃんから聞いた」
なら良かった、このゲーム全てのプレイヤーにアキという名前を覚えられずに済んで良かった。
活躍したプレイヤーにどうしたら強くなれるのか、とか一緒にバーティ組んでくれませんかとか言われる羽目になったりするからな。
考えすぎかもしれんが。
「嬢ちゃん良かったな、サツキの嬢ちゃんから連絡だ」
「いやいい、聞かない、聞きたくない」
「攻略組からのご招待だ」
「凄いなぁ、初心者なのに攻略組かぁ」
「嬢ちゃん、これはかなりレアなケースだぞ?入ってみたらどうだ?」
「だが断る」
どこぞの奇妙な冒険のワンフレーズのようにおっちゃんの言葉をバッサリと切り捨てる。
するとおっちゃんはやっぱりな、というような表情を浮かべ肩を竦める。
「嬢ちゃんはやっぱそうでなくっちゃな」
「な〜にを知ったような口聞いてるんだかね」
「いや、俺から見た嬢ちゃんは攻略組なんざに縛られるよりソロで色々面白い事をやって退ける、そんな人物だからな」
「案外わかってんじゃん」
アキはおっちゃんの評価を少し改めるとアイテムボックスを開き、サツキ達と狩ったBOSSの素材をカウンターの上に無造作に置いた。
「これ換金お願い」
「おう」
「それとちょっとだけ強めの片手剣を頂戴」
「素材代から引くがいいか?」
「あいよ」
おっちゃんと短い言葉でやり取りをし、鉄の剣とBOSSの素材分の5000Gを受け取ると、アキは早速試し斬りを━ほね太郎が━するためにダイ草原へと急いで向かうのだった。
〜〜〜
━━ズシュッ
いつもより軽快な肉を切り裂く音がほね太郎に渡した得物の性能を物語る。
亡国の剣の時は二三回程攻撃しなければ倒せなかった道中の敵MOBを一撃で屠っているところからもダメージが格段に上がっていることが分かる。
当の本人は新しい得物が貰えたことにはしゃいでいるのか、今にでもスキップをしそうな程軽快なリズムで次々とPOPした敵MOBを次々と一刀両断していく。
「太郎は元気だねぇ〜」
俺はと言うと、数メートル離れた所に座り込みほね太郎のステータスや自分自身のステータスを全て横に並べ見ていた。
「ほうほう、ほね太郎は死霊剣術から派生してビッツァニア王国剣術ってのに変わってるのか」
アキは見た事も聞いた事もない単語に興奮しつつスキルの詳細を開く。
ビッツァニア王国剣術
今は無きビッツァニア王国に伝わる剣術。
この剣術は限られた極僅かな人物のみが継承でき、この剣術を習得している者には数年剣術に触れている程度では一太刀入れるどころか息を乱すことすら出来ない。
いやなにこれ、フレーバーテキストすっごいかっこいいんだが。
これを覚えてるって事はほね太郎って生前かなり強い子だったって事だろ?
普通に召喚してそのまま還ってしまっていたらこんな事実にも気がつけなかった訳だ、死霊王の灯火、そしてこの指輪をタダでくれたおっちゃん本当にありがとう。
アキは心の中でそう述べると胸の前に手を組み祈るような姿勢をとり、感謝の気持ちを心身ともに表す。
「カラッ」
「ん?あぁ、終わったのね」
「カラッ」
そこへトントン、とほね太郎が肩を叩き試し斬りの終了を告げてきた。
「よし、んじゃ帰るかっ…………うん?」
帰ろうと思い、ステータスを閉じようと手を画面に触れた時、ネクロマンサーのレベルが上がっていることに気がついた。
一切戦闘も召喚もしてないのになんでレベルが上がってるんだ?
「ほね太郎、もうちょっと試し斬りと言うか検証しようか」
「カラッ」
「よし、ほね太郎俺と模擬戦してみようか!!」
何故そうなったのかって?ほね太郎の戦闘行為がネクロマンサーのレベル上げになると思ったからさ!!
ついでに防御行為だけでガーディアンのレベルも上がるかの検証もね?
「さぁほね太郎、手加減なしの本気でこい!!」
俺は声高々に叫ぶと先程手に入れた盾とほね太郎から預かっていた亡国の盾を装備しほね太郎と対峙する。
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