第15話
「正直次のBOSSは無理だなぁ……」
「だろうな」
天と地が逆さまな状態で、アキとサツキは平常トーンで話し合っていた。
見上げる、いや、見下ろすか?まぁもうどうでもいい、俺が下を見下ろすとダイ草原が流れる様に視界を通過して行った。
「あのスライム、BOSSはBOSSでも中BOSSだったんだな」
「そうだよ、ここのエリアBOSSはグリフォンだからね」
「あー、だからこんなMOBがいるのね〜」
アキはそう言うと自分を掴み飛び回る成体のヒポグリフを指さす。
「そうだねぇ〜」
「んで、俺らはこれからどうなんの?」
「ん?死ぬ!」
「デスヨネー」
サツキの死ぬ発言に合わせ俺達はヒポグリフの足から離れ、ヒポグリフ達の巣であろう場所で待ち構えていた鳥型のMOBの口に入っていった。
今日の初デスはヒポグリフの雛の餌にされるでした。
~~~
沈んでいた意識が浮上し、目を覚ますといつもの街と目の前で話しているサツキとシャケが写った。
「いやぁ、やられちゃったねぇ」
「おっ、おかえり〜」
「はぁぁ、もう最っ高な気分だよ畜生が……」
まだ雛に喰い殺される感覚が残っているアキはどうにか忘れようとしゃがんでインフィニティを描き始めた。
「おいどうするよ、うちのアキさんがあの調子じゃあBOSS周りはきつそうだぞ?」
「うーん、そうだねぇ…………シャッケ、アキ置いて他の狩場に行こうか!!」
「そうするか!!」
サツキとシャケはニヤッと笑うとそそくさとどこかへ行ってしまった。
あー、本当にこのゲーム楽しいけどやりたく無くなるんだよなぁ…………。
ワニの時と言いヒナの時と言い俺の死因全部美味しく頂かれているじゃねぇか…………。
少し冷静になり死因を解析していると何と全てがパクリといかれて死んでいる事に気がついたアキは、次こそは餌ENDを回避するべくスキルやジョブを見におっちゃんの店まで少し震えながら歩みを進める。
「熊の素材とエルダースライム、他雑魚MOBの素材で何か有用なものが買えるといいんだけど…………」
「へぇー?君初心者装備付けてるのに案外やるんだねぇ?」
アキが独り言を呟きながらおっちゃんの店がある通りを歩いていると後ろから糸目で紫髪の青年の声が聞こえてきた。
「アキ、ガーディアン兼ネクロマンサー、お前は?」
「ん〜?僕はね、キリサメって言うんだ。僕のジョブは剣豪だよ」
「剣豪?」
聞いたことの無いジョブにアキが首を傾げていると後ろにいた青年が前へと回り込み、笑いながら剣を抜刀する。
「俺には問題が絶えず降りかかるデバフでもかかってんのかな?」
「じゃあ僕は面白そうな相手が見つかるバフかな?」
「かったりぃなぁ……」
俺がため息を一つ吐くとその瞬間、青年は距離を2メートル弱まで一歩で詰めてきていた。
「うっそ?」
「あはっ!!」
目の前に青年が迫っていた事に遅れて気が付いたアキは咄嗟に盾を手放し、上半身を後ろに倒し手を着くとそのまま一回転し両方の手を鳴らす。
「すごーい、僕の攻撃を避ける人ってうちのギルドの人以外にいないんだよ〜?」
「まぐれだまぐれ、ほね太郎、くま五郎、警戒しとけ。もし来たらやっちゃって」
「いや、僕はもういいや〜満足〜」
糸目の青年はその糸目を更に細め先程までのサイコな笑みとは違う心からの笑みを零しながら剣を納刀し、手を振りながらどこかへ去っていってしまった。
「…………は?」
サツキの様に嵐の如く急に現れ荒らしてそして急に帰ったキリサメにアキはただ呆然と立ち尽くすだけだった。
~~~
「って事があったんだよ」
「嬢ちゃんほんと何者なんだ?キリサメっつったら攻略組のNo.1 レッドプレイヤーだぞ?」
と、先程までの出来事をおっちゃんに全て話すとおっちゃんは目を見開き、フツメンのその顔をゴリラのような険しい顔に変える。
いやもうこれはゴリラだな、おっちゃんのおをゴリラのゴに変えてゴっちゃんだ。
「ゴっちゃん……ぷふっ」
「人の顔を見て何笑ってんだ」
「いや、面白くて……」
俺が笑い始めるとゴっちゃんはそのゴリラっ面をさらに完成度の高いゴリラへと変貌させていく。
「ぶふぉっ!!」
「よし、嬢ちゃん。俺の顔を笑ってくれたお礼に無知な嬢ちゃんに情報を叩き込んでやろうか」
「くくくく…………エッ?」
俺が腹を抱え笑っていると突然腕と足が拘束され、身動きが取れなくなる。
「や、やめろー!!酷いことするんでしょ!!エ○同人みたいに!!エ○同人みたいに!!」
「やめろ嬢ちゃん!!変な事を大声で言うな!!」
「衛兵さーーーーん!!」
「だぁぁぁぁぁ!!」
この後滅茶苦茶TPOの知識について叩き込まれた。
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