hibinokoto

荷風 玉響

第1話 朝の景色

私は、川辺の比較的手ごろなマンションに住んでいるのだが、ここでしか味わえない解放感がある。

都会でこの景色を得るには、相当額が必要だろうが、都心から2時間も過ぎれば、私でも手が届く。自分がこの地球の生物の一つであり、息をして生きていると実感できる。

私は、この実感を様々な形で体感認識するのが好きだ。


例えば、朝。

カーテンを全開にして過ごしているので、朝日を体中に浴びてまどろんでいる感じがたまらなく良い。

そして、ひと眠りして起きると、180度、何も邪魔されない景色が目に飛び込んでくる。

川辺のマンションは、虫も多いが景色もいい。

私にとって虫は訪問者であり。楽しみの1つでもある。


遅めのブランチをベランダに運び、景色を眺めながら食す。この景色の中で、孤独が寂しいなどと感じたことはない。かえって、独りで味わい深い時間を過ごせることに感謝するくらいだ。

頼む、誰も邪魔しないでと、連絡がこない事、チャイムがならない事を願う。


一日中景色を眺めながら、外に一歩も出なくでも結構楽しめる。

贅沢な時間だ。


好きな小説、写真集、絵画集等、様々図書館から借りてきて、積んである山から今日の1冊を手に取り、読み始める。たまに来る小さな訪問者が、文字列を斜めに進んでどこかに行ってしまう。愛おしい訪問者だ。


子供の泣き声や、鳥の声、大人の話声、等の生活音が活気を増す頃に、一気に空の景色も川の色も変わる。


時の流れが見てわかる。そう、五感で時間を感じる。

温度、湿度、光、色、匂い、音。。。数えきれない。。


この時間の重なりが私の感性を作っているのかもしれない。

 

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