第31話
「美樹、お前がドアを開けろ。そして、何が起きたのかをちゃんとその目で確かめろ。」
美樹は少し不安そうに俺の方を見るとドアへ手をかける、そしてゆっくりと開いていった。
そして、病室の中へと入っていく、俺と心も美樹の後を追い、中へと入る。
中では風花がベッドの上で横へとなっていた。
その姿は以前のような傷跡は残ってはおらず、髪は生え、火傷の跡も顔にはなかった。
「なんだ…美樹の言った通りじゃん。それに風花さんの顔の傷跡も消えて…美樹があってたんだよ。」
ベッドに眠る風花の姿を見て、美樹はそう言っていた。
こいつは何も分かっていない、何もいいことなどない。
「本当にそう思っているのか…だとしたら、俺はお前を見損なったよ。布団の下を覗いてみろ…。」
美樹は不満そうな顔をすると布団に手をかけ、布団の下に隠れている風花の体を覗いた。
「なっ…!?」
彼女は風花の本当の姿を見て、思わず声を詰まらせる。
俺の隣に立っていた心は風花から目をそらし、辛そうな表情をしながら俯いていた。
「お前にはそれでも良かったと言えるか?風花の姿を見て、今でもこの世界に変えて良かったと言えるのか?」
「ちっちがう…こんなの違うよっ!!!」
「何が違うんだ、お前が望んでいた世界なんだろう。」
彼女は自分のしでかしたこととちゃんと向き合わなければいけない。
「なっ何で…だってあの人がいなくなれば…風花さんは…こんなことにならないって…。」
こうして、風花が目の前にいるってことは美樹は風花には何もしていない。
だとしたら、あの時に何をしたんだ。
どうしたらこんな世界へと変わってしまったんだ。
「美樹、お前はあの時に何を変えたんだ。」
「知らないっ、美樹は何も知らないっ!!!」
彼女はそう言うと頭を抱えながらよろよろと後ろへと下がって行く。
「答えるんだ、お前はあの時に何を変えたんだっ!!!」
後ろへと下がっていく、美樹に俺は近づいていく。
すると美樹は俺の方へと目を向けた。
「フレアだよっ!!!フレアが風花さんのことを苦しめたって言ってたからフレアの存在を消したのっ!!!そうすれば、風花さんの未来が正しい方向へ変わるって言ってたからっ!!!」
どう言うことだ。
美樹は自分からあの時に力を使ったのではないのか。
だとしたら、誰がそんなことを美樹に吹き込んだんだ。
「誰がお前にそんなことを教えたんだっ、答えろっ。」
「違う…美樹のせいじゃない…美樹は…ただ…。」
彼女はそう言うと床へとしゃがみこみ、泣き出してしまった。
美樹のこんな姿を見てしまった、俺はこれ以上、彼女のことを責めることができず、心に美樹のことを任せる。
結局、誰があんなことを美樹に頼んだのかは分からなかった。
ただ、その後ジョウから通信が入り、風花がどうしてこんな姿になったのかを説明を受ける。
ジョウによると風花は父親から虐待を受け続け、保護された時には酷い状態だったらしい。
一体、どれほど酷い目にあえばこれだけの傷跡が残るのか。
彼女の体には本来ならあるはずのものがなくなっている。
それも一つだけではなく、いくつかなくなっているものがあった。
こいつはもう女として生きることはできないと医者に言われていたらしい。
風花は俺に言っていた。
父親は男の子を欲しがっていたと。
もし、俺の考えていることを彼女の父親がやったのだとしたら。
俺は許せなかった、こんな世界へ変えてしまった美樹にも非はある、だが、それ以上に怒りを感じたのはこんなことをしておいて一人逃げている父親だ。
あれから俺は奴の居場所を突き止め、奴が何をしているのか確認しに行った。
もしも、風花を傷つけたことを少しでも悔いているのなら歩けなくなるまで痛めつけるだけで許すつもりだった。
だが、奴は自分の娘にこんな酷い仕打ちをしておきながら、まるで風花なんて居なかったかのように過ごして居ることがわかる。
「ジョウ…心…聞こえるか。ヒーローをやる前にやるべきことができた。おってまた連絡する。」
一方的に通信を行い、無線を切ると軽く体を動かす。
さて、奴の隠れ家の周りは警備が厳重だ。
下手に見つかって逃げられるのだけは面倒くさい。
それならば、静かに乗り込み、奴を捕まえ、地獄を見せてやろう。
鞄から用意していた布を取り出すと口元を隠し、頭にはそこらで買った野球帽を被る。
これで正体はバレないだろう。
隠れ家の塀の近くへと移動すると塀を軽く飛び越える。
外はあれだけ警備が厳重だったにもかかわらず、中の警備はズボラだった。
簡単に建物の中へと入ることができ、俺は廊下を歩いて行く。
すると奥の扉から声が聞こえてきた。
「よう、炎上の旦那。話ってなんだよ。」
この声には聞き覚えがある。
忘れもしない声だ。
俺は念のために持ってきておいたボイスレコーダーを起動させ、二人の音声を録音する。
「石頭(せきがしら)約束の金はいつになったら貰える。もうあれから10日も経ってしまったぞ。」
「なんだ…そんな話かよ。そんなつまんねぇ、話でこの俺をここへ連れてきたってのかい?」
「つまんない話だとっ、貴様っ、私がどれだけお前に協力してやったと思っているんだっ。お前のくだらん作戦とやらのおかげでこっちは部下を何人も怪我をさせ、そして何にも失ったのだぞっ。貴様がいつまでも金を払わんと言うのなら貴様とはこれっきりにしてもらう。」
一体、何の話をしているんだ。
それにこの石頭と呼ばれた男の声は…。
「…たくっ、わぁったよ。金だろ、金なら次ここへ来るときにもってきてやるよ。」
「なるべく早く頼む。色々、面倒な事に巻き込まれてしまったからな。」
「んなことよりもよ、リーダーから伝言があんだよ。近々、大きな戦いがあるからお前も仲間として参加しろだってよ。俺も詳しくは説明聞いてねぇからなんなのかはわかんねぇが、強制参加らしいぜ。」
「……そうか、分かったとだけ伝えておいてくれ。」
二人は会話を終えると石頭と呼ばれていた人物が扉を開け、出口へと向かって歩いて行った。
やはり、俺は間違っていなかったようだ。
奴はストーンで間違いない。
だが、何故、炎上家…風花の父親と彼奴がこんな話をしているのだろうか。
……それも全部こいつに聞き出せばいいか。
大きく深呼吸をし、自分を落ち着かせると俺はドアを蹴破り、中へと入って行く。
「なっ…なっんだ!!!」
奴は腰にぶら下げていた拳銃を取り出そうとする、だがその前に奴の元へと一気に駆け寄り、顔面に拳を入れた。
「ぐっ…ギっ!!」
鈍い音が聞こえ、奴の体は吹き飛び、転がって行く。
俺は奴の持っていた銃を拾うと転がって行く奴を止め、額へ銃を突きつけた。
「お前には聞きたいことが山ほどある。だが、その前についてきてもらうぞ。」
このまま連れて行ったところで騒がれることが目に見えていた、だから俺は銃の持ち手で奴の頭を叩くと奴を気絶させ、肩に担ぐ。
そしてすぐに来た道を戻り、塀を飛び越えると何事もなかったかのように車へ乗り込み、フレアと戦った廃墟へと向かった。
このままアジトへ戻っても良かったが、その前にこいつに分からなせなければいけないことがある。
風花をあそこまで苦しめたこの男にも苦しみを与えなければ。
車を廃墟の近くへと停めると男を肩に担ぎ、廃墟の中へと入る。
中の構造や汚さはあの時と何も変わらなかった。
変わっていることと言えば、壁の落書きの柄が変わっていることぐらいだろう。
男を地面へと降ろし、俺はこいつのために準備を始めた。
そして、準備を終えると椅子に縛り付けた男へ水をかける。
「ぶっはぁっ!?」
男は水をかけられ目を見開き、咳込んでいた。
「なっ…なんだここはっ!!!それにお前はっ!!!」
自分の身に起きていることがまだ分かっていないのだろう。
男は口を金魚のようにパクパクと動かし、辺りをキョロキョロと見渡している。
「さて、それではさっきの話の続きをしようか。」
俺はそういうと奴の前にある椅子に座り、机の上に置いてある拷問する為の器具を奴へ見せつけた。
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