エピローグ
ソフトボール地区大会の決勝戦。
私は、理沙、明日香、マキちゃんと一緒に観客席にいた。
スコアは2対2。緊迫した雰囲気で迎えた9回裏、バッターボックスに奏が入る。
「いけー、奏!」
「打てよー!」
ベンチだけじゃなく、スタンドのあちこちから声が上がる。
「奏先輩、頑張ってー」
そこは人気者の奏。
後輩達からは、ハートマークが飛んでそうな黄色い声。
ニヤニヤしながら、理沙が耳打ちしてきた。
「恵那は、応援しなくていいの?」
「が、頑張れー、か、かな、、、、で」
あー、恥ずかしい。
2人きりの時は、少しずつ呼べるようになったけど。
さすがに大勢いる中では、ムリ。
「恵那ちゃんは、初々しいねえ。明日香とは大違い」
「サラッと私の悪口言ってんじゃないわよ」
またマキちゃんと明日香がやってる。
と、バットを振った奏が突然しゃがみ込んだ。
「ファウルボールが当たったか」
マキちゃんが状況を説明してくれる。
すぐに立ち直らない奏を見て、思わず立って叫んでしまった。
「奏ー!」
立ち上がった奏が、こっちを向いて親指を立てた左手を突き出してくる。
「ヘタレな癖に、キザなやつ」
嫌そうに理沙は呟くけど、私はすごく嬉しい。
その後、奏は見事なホームランを打って、チームは優勝した。
試合後、満面の笑顔で駆け寄ってくれた奏を思い切り抱きしめる。
去年の同じ日、あなたとの距離は遠すぎて、涙を拭ってあげられなかったね。
1年経って、あなたとの距離はこんなにも近くなった。
誰よりも近い、ゼロの距離に。
あなたとの距離 @Yuriharu
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