第6話 見たい/見られたくない

また、長谷川さん。

何て大胆な。


理沙と明日香と3人で更衣室に着いた時、立花さんが奥の方にいるのが見えた。


出口付近で上着を脱いで、ブラウスのボタンを外していると、長谷川さんの甘ったるい声が聞こえてくる。


「奏、腹筋割れてるー。すごいねえ」


え、また?

着替え途中にも関わらず、思わず声の聞こえた方向に体が向いてしまう。


そこには、長谷川さんが、スポブラだけを身につけた上半身裸の立花さんの腹部に、手を這わせている姿が飛び込んできた。


初めて見る、立花さんの引き締まった身体に目が奪われる。


まさに、アスリートの身体で、惚れ惚れしてしまう。


って、それどころじゃない。

長谷川さんったら、なに立花さんに触ってるの!


「長谷川が羨ましい?」


隣から、既に着替え終わった理沙が耳打ちしてきた。


え?

私が立花さん見てた事、気づかれた?


取り繕う言葉を探してると、後ろに古谷さんを伴った立花さんが、正面に来て足を止め、驚いたように目を見開いて、マジマジと私を見てきた。


あ、私まだ着替え途中で、、、。

咄嗟に視線を下げると、ブラウスをはだけさせ、ブラを露わにしている自分の姿に気づいて、慌てて腕で隠す。


女の子同士なんだから、下着姿を見られるのなんて恥ずかしいはずないのに、何故か立花さんには、どうしようもなく恥ずかしく感じる。


あー、きっと私、今顔真っ赤だ。


立花さんと古谷さんが体育館に向かう気配がした。

慌てて着替えを再開させていると、


「やっぱりね」


横からボソッと呟く理沙の声が耳に入る。


「え?やっぱり、、、」


私が言い終わらないうちに、明日香から「早く行こうよ」とせっつかれて、「先行ってるね」、と理沙は明日香と一緒に行ってしまう。


てっきり冷やかされたのかと思ったんだけど、意外にも理沙の表情が硬かった事が気になった。



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